2011年5月21日土曜日

Tylor 1898


小さな建物であっても、何年も経ってから、やはり重要だと改めて認識されるものは少なくありません。
エル・カブにあるアメンヘテプ3世の小神殿も、そのひとつ。観光客は至って少なく、レストハウスも一応作られていますけれども、開店している時があるのかどうか不明。
古代エジプト建築の本には、この小さな建物の側面で見られる石の積み方が変わっていると言うことで、図版が載せられています。その写真を撮るためにだけ出かけるというのも、考えてみれば愚か者のすることですが。

タイラーはエル・カブの記念建造物を記録に残す仕事に携わった人で、室内にたった4本の柱しか立っていないアメンヘテプ3世の小神殿を扱ったこの本は薄いけれども非常に大きく、エレファント・フォリオと呼ばれる部類に入ります。
僕は少なくとも20年間、古書店のカタログでこの本に言及した例を見た覚えはありません。市場にはほとんど出ていない稀覯本だと思います。
ブルックリン美術館のウィルボー・エジプト学図書館で見かけたきりでした。

John Joseph Tylor,
Wall Drawings and Monuments of El Kab:
The Temple of Amenhetep III
,
with plans, elevations and notes by Somers Clarke
(London: Bernard Quaritch, 1898)
http://digitalgallery.nypl.org/nypldigital/dgkeysearchresult.cfm?parent_id=1016778&word=

今ではデジタル化されているようで、久しぶりに目にしました。
大きい本だし、海外に複写を依頼しても断られることが多い書籍だったので助かります。
彼はこのシリーズで4冊を出しており、いずれも日本で見ることは未だ難しいかも。

The Wall Drawings and Monuments of El Kab
(London: Bernard Quaritch)

Vol. I: The Tomb of Paheri (1895)
Vol. II: The Tomb of Sebeknekht (1896)
Vol. III: The Temple of Amenhetep III (1898)
Vol. IV: The Tomb of Renni (1900)

キベル、そしてソマーズ・クラークと一緒に、タイラーは「エル・カブ」という簡素な本も出しています。

J. E. Quibell, S. Clarke, and J. J. Tylor,
El Kab
(London: B. Quaritch, 1898)

大英博物館が出している電子ジャーナルのBMSAESでは、ベルギー隊によるエル・カブ調査の近年の動向が報告されていますので、エル・カブの様子を知るにはこの論考から見ると良いかもしれません。
エジプトの遺構を網羅しているはずのポーター・モスでも、中部エジプトを扱っている巻は改訂版が永らく出ていませんので、こうした論文の類における参考文献の欄が頼りとなります。

Luc Limme,
"Elkab, 1937-2007: seventy years of Belgian archaeological research,"
BMSAES 9 (2008), pp. 15-50.
http://www.britishmuseum.org/pdf/Limme.pdf

半分以上のページが図版。
ページ数が多いので、ダウンロードにかなり時間がかかったりします。

0 件のコメント:

コメントを投稿