2009年9月26日土曜日

Greenlaw 1976 (reprint 1995)


紅海に面したスーダンの交易港スアキン(サワーキン)における、珊瑚ブロック造のイスラーム建築を扱った報告書。KPI社から出版される20年ほど前の1976年に、私家本という形式ですでに発表されていたとの注記が見られます。長い年月をかけて粘り強く建築調査が進められた成果の結実。
サンゴ造建築に関する、非常に有名な先駆けの書。しかしGarlakeの著作などへの言及はありません。

Jean-Pierre Greenlaw,
foreword by Mansour Khalid,
The Coral Buildings of Suakin:
Islamic Architecture, Planning, Design and Domestic Arrangements in a Red Sea Port

(Kegan Paul International, London and New York, 1995.
First published privately in 1976)
132 p.

Contents:
Preface, p. 6
Chapter One: The Town of Suakin, p. 8
Chapter Two: The Story of Suakin, p. 13
Chapter Three: Domestic Life in Suakin, p. 17
Chapter Four: Roshans; Casement Windows, p. 21
Chapter Five: Earlier and Larger Turkish Houses, p. 22
Chapter Six: Smaller Turkish Houses, p. 38
Chapter Seven: Zawias and Mosques, p. 62
Chapter Eight: Egyptian Style Buildings, p. 72
Chapter Nine: Military Buildings, p. 85
Chapter Ten: Building Methods, p. 87
Chapter Eleven: Woodwork, p. 103
Postscript, p. 132

建物の剛性を高めるために、壁体へ木材を積み入れて補強するというのが一番の特徴。壁体の厚さも地上階から上へ行くに従って順次、減じられます。高層の建物も実現されているというのが見どころ。
サンゴは切石を用いており、かなり質の高いものが使用されたことがうかがわれます。

近海の海にてなされたサンゴの調達は、石材と比べてどのような利点があったのかが面白い。石や木と同様に、割れやすい方向性を有する素材であったはずで、しかも内部に多数の細かな空孔を含んだ建材だから、断熱性も有利で、重量も比較的軽かったと思われます。
一方、もろいのが欠点で、たぶん細かな彫刻には向きませんでした。

日本でも、南島には同じ建築方法が見られます。まだ比較考察がなされていない分野。
キルワなどの西アフリカから、紅海を経てインド半島沿岸、そして日本に至る、活発な海上交通を前提として作られた建物群と言うことができます。しかし作り方は一様ではなく、地方色が豊か。
木材を組積造に補強として積み入れる方法はミノア時代から確認されているわけで、こうした世界を通覧する楽しみが今後、開けていくかもしれません。
「石切場」としての珊瑚礁にもこれから注目がなされるかと思われますが、これは水中考古学の領域でもあります。

0 件のコメント:

コメントを投稿