2009年10月14日水曜日

Cadogan, Hatzaki and Vasilakis (eds.) 2004


2000年に開催されたクノッソス宮殿に関する国際会議の報告書。この年はアーサー・エヴァンスがクノッソスの発掘調査を開始した1900年のちょうど100年後に当たり、記念行事として英語とギリシア語の2ヶ国語を使用言語に定め、開かれました。
刊行までに4年かかっていますが、編者たちにとって両言語における綴りや表音の違いが大きく、思わぬ時間を要したと冒頭に書いてあります。

Gerald Cadogan, Eleni Hatzaki and Adonis Vasilakis eds.,
Knossos: Palace, City, State.
Proceedings of the Conference in Herakleion organised by the British School at Athens and the 23rd Ephoreia of Prehistoric and Classical Antiquities of Herakleion, in November 2000, for the Centenary of Sir Arthur Evans's Excavations at Knossos.
British School at Athens Studies 12.
(British School at Athens, London, 2004)
630 p. including CD-ROM.

厚い本で、もし一部分をCD-ROMに回さなかったら、もっと重たい書物になっていたはずです。CD-ROMを添付する出版形態は近年見られるようになりましたが、一般的ではありません。冊子体と電子化された発行物にはそれぞれ短所と長所があり、どちらかが圧倒的に優れているというわけではない。
長く残すことを優先するのであれば、CD-ROMで配布することはもちろん躊躇されます。

全体は54編で、これが13のトピックに分かれます。

From Neolithic to Prepalatial Knossos
Knossos: Palace, city and cemeteries
Politeia
Architecture, arts and crafts
Administration and economy
Religion
Ports of Knossos
Knossos overseas
Greek and Roman Knossos
Knossos: Past and present
Lectures at the Herakleion Museum on 23 March 2000
Contributions to the excavation history of Knossos

クノッソスの宮殿建築に関連する下記の論考、

C. Palyvou, "Outdoor space in Minoan architecture: 'community and privacy'"
(pp. 207-17).

D. J. I. Begg, "An interpretation of mason's marks at Knossos"
(pp. 219-23).

L. Goodison, "From tholos to Throne Room: some considerations of dawn light and directionality in Minoan buildings"
(pp. 339-50).

などもありますが、これらの他に、発掘者エヴァンスについての発表もいくつかあって、こちらの方がどちらかといえば面白い内容を伝えています。どういう経緯でクノッソスの土地を買い集めたのかとか、若い頃は何をやっていたのかとか。
エヴァンスと言えば、自分で解読しようと線文字の資料を独り占めしたり、宮殿の修復方法などで良くないイメージを持たれていますが、改めて公平に彼の人生全体を見直そうという試み。

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