2014年5月8日木曜日
Silva 2004
スリランカの建築史を語る上で重要な本。著者のローランド・シルヴァ(ローランド・シルバ)氏は高名な方で、世界的な要職を務めた人です。ICOMOSの委員長にアジア人として初めて就きました。遺跡保存のために尽力されています。
Roland Silva,
Thūpa, Thūpaghara and Thūpa-Pāsāda.
Architecture and Town Planning in Sri Lanka during the Early and Medieval Periods.
Memoires of the Archaeological Survey of Ceylon, Volume X, Part II.
Colombo, The Department of Archaeology, 2004.
x, 225 p.
Contents:
Preface (v)
Acknowledgement (vii)
Contents (ix)
Chapter I: Introduction (p. 1)
Chapter II: Thūpa or Stūpa (p. 5)
Chapter III: Thūpaghara or Vaṭadāge (p. 69)
Chapter IV: Thūpaghara or Kuḷudāge (p. 97)
Chapter V: Thūpaghara or Cetiya Leṇa (p. 103)
Chapter VI: Thūpa-pāsāda or Pyramidal Stūpa (p. 107)
Chapter VII: Conclusion (p. 115)
Appendix I: A Chronological List of Sri Lankan Kings (p. 119)
Appendix II: Dimensions of Dāgābas (p. 123)
List of Figures (p. 125)
Figures (p. 137)
List of Plates (p. 163)
Plates (p. 169)
Glossary of Architectural Terms (p. 201)
Bibliography and Abbreviations (p. 207)
Index (p. 219)
目次では若干の乱れが見受けられます。念校の段階で生じた変更が、うまく反映されなかったんでしょう。
出版はスリランカの考古学局で、つまり建築史の専門家はここでも少なく、考古学者が主導しているありさまが了解されます。イギリスに統治されていた時代があって、このためにこの国の考古学はどちらかと言えば英国寄りと判断されます。アヌラーダプラの発掘報告書がBARのシリーズ(British Archaeological Reports)で出ていたりします。
大国である隣のインドとの違いをどのように打ち出すかに関しては、スリランカの考古学者たちはとても良く考えている様子で感心します。古代からヨーロッパとの交易が試みられていた地域でした。
さて、153ページにはポロンナルワのワタターゲーの復元図が掲載されています。154ページには詳細図も載っています。実は10年以上も前に、
中川武監修、
「スリランカの古代建築:アヌラーダプラ後期〜ポロンナルワ期(7世紀〜13世紀)の寺院建築遺構の設計方法と復元に関する考察、および修復方法への提言」
早稲田大学アジア建築研究会、1990年、
(x), 294 p.
が先に出版されました。調査に当たってはシルヴァ氏にさまざまな便宜を図っていただきました。
実質的には黒河内宏昌氏がほとんど全章を執筆したこの報告書のpp. 169-180にはダラダーマルワ寺院のワタターゲーの復元が記載されているので、見比べるとどのような違いがあるのかが分かり、有益です。主要部の屋根勾配や入口部の屋根の形式が細かく変更されており、復元図の作成の際には、こうした細かい点こそが要。
1990年に日本で出版された「スリランカの古代建築」についての引用がない点は残念ですが、どこの世界でもあることですし、今後、事情が変わることを期待しています。「スリランカの古代建築」の巻末には英語のサマリーが付されており、また各図版のキャプションには英文も併記しているのですけれども、他の手立てが必要であったとも思われます。同じことは、当方が担当した「マルカタ王宮」の報告書でも当てはまるわけです。
ワタターゲーの素晴らしい模型は、成田剛氏の手による労作でした。記しておきます。
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