2009年6月2日火曜日

Vergnieux and Gondran 1997


アメンヘテプ4世(アケナテンもしくはアクエンアテンという名前に変えられる前の王名)がカルナックのアメン大神殿の裏側に作った神殿の復原をおこなっている本。コンピュータ・グラフィックスをたくさん用い、ほとんど全ページにカラー図版があります。

Robert Vergnieux et Michel Gondran,
Amenophis IV et les pierres du soleil: Akhenaton retrouve
(Arthaud, Paris, 1997)
198 p.

カルナックの裏側には、観光客は現在、立ち入ることができませんが、こんな凄いものが当時はあったのかと驚かされます。と言うか、アマルナのアテン神殿をそのまま持ってきている復原図ではあるのですけれども。

「タラタート(タラッタート)」と呼ばれる石の説明が詳しく、石切りの様子までも復原しています。またそこに残されているレリーフのジグソーパズルを経て復原された壁面レリーフの図が掲載されており、これもまた見事。

タラタート(タラッタート)というのは、長さが1キュービットの石で、後にアメンヘテプ4世からアケナテン(アクエンアテン)と名前を変えるこの王様だけが使った規格石材。
3000年の間、古代エジプトではさまざまな石造建築が造られましたが、その石材の大きさはまちまちで、同じ大きさのものはないと言っても良いかもしれません。
例えば、クフ王のピラミッドでは、上に行くほど石の大きさは小さくなっていきます。唯一、石の大きさを揃えて建物を建てたのがアメンヘテプ4世で、このためにこの石が出土すると、たちどころに時代が分かります。石の大きさだけで時代の判別ができるという、稀有な例です。

一般向けなので、巻末の参考文献は最小限に抑えられています。
ルクソール博物館の2階には、タラタートによる復原された大壁面の展示があって、この博物館の特徴のひとつとなっていますが、しかし石のパズルというのは大変で、かつてはIBMが協力し、どの石とどの石とが合うかをコンピュータを使って処理したりもしました。この仕事はカナダの歴史家D. レッドフォードが進め、別に報告書も刊行されています。

カンボジアのバイヨン寺院の外周壁のパズルをやろうか、という企画にも関わったことがありましたけれども、ひとりでは到底動かせない石材のレリーフのパズルというのは大変です。本当に接合できるのかどうか、最後はやはり合わせてみないと分からない。
ボロブドゥールの首を切られた多数の仏像でも、頭と胴体との接合をコンピュータで処理する試みをおこなっていたかと思います。

「アメンヘテプ」と刻まれている王名を、「アクエンアテン」と刻み直している写真もあったりと、見て楽しませることが存分に発揮されています。
83ページに掲載されているカルナックのアメン大神殿のカラー図版による平面図では、どこの部分をどの王が建立したがが一目で分かり、重要。こういうものを掲載している書籍はきわめて限られます。
カルナックへ行けば、入口のところに似たような大きな平面図がガラスに入って掲示されていますが、その綺麗な図版が載っているとお考えください。

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