新王国時代の神殿型貴族墓(tomb chapel:トゥーム・チャペル)の背後には、せいぜい高さが数メートルの、小さな規模のピラミッドが造られました。かつてピラミッドは王の墓であったわけですが、新王国時代に至るとその伝統が途絶え、代わりに貴族たちが真似して小さなものを建て始めます。
情報が錯綜しがちなのは、小さなピラミッドのかたちを「ピラミディオン」と言う点で、古王国時代の大きなピラミッドで最後に設置される四角錐の頂上石をこう呼ぶとともに、新王国時代の小さなピラミッドの全体もまた「ピラミディオン」と記されたりします。さらには、新王国時代のこの小さなピラミッドに置かれる頂上石も専門家によって「ピラミディオン」と名付けられており、混乱を招きやすい状態です。
ここで扱われるのは、新王国時代に建造された小さなピラミッドの頂上に置かれた四角錐の建材で、銘文や図像が記されているため、古代エジプトの葬制に関わる重要な史料となるわけです。
Agnes Rammant-Peeters,
Les pyramidions égyptiens du Nouvel Empire.
Orientalia Lovaniensia Analecta (OLA) 11
(Departement Oriéntalistiek, Leuven, 1983)
xvii, 218 p., 47 planches.
Table des matières
Introduction (ix)
Bibliographie et liste des abréviations (xiii)
Première partie. Inventaire des documents (p. 1)
I. Pièces conservées dans les musées. Doc. 1-72 (p. 3)
II. Pièces et fragments conservés à Deir el-Médina. Doc. 73-92 (p. 80)
III. Pièces dont le lieu de conservation est inconnu. Doc. 93-107 (p. 92)
IV. Mentions à ne pas retenir (p. 101)
Deuxième partie. Étude des documents (p. 103)
Chapitre I. Technique (p. 105)
Chapitre II. Provenance (p. 113)
Chapitre III. Décoration (p. 121)
Chapitre IV. Évolution chronologique (p. 133)
Chapitre V. Inscriptions (p. 139)
Chapitre VI. Fonction architecturale (p. 165)
Chapitre VII. Signification religieuse (p. 176)
Chapitre VIII. Orientation (p. 192)
Appendice: La documentation de Deir el-Médina (p. 202)
Index (p. 211)
Planches (p. 217)
出版されたのはもう30年ほど前となり、この後にいくつものピラミディオンが発見されているので改訂が望まれます。
建築の見地からは、最後の図46と図47が何を意味するかが貴重。
史料ではピラミディオンの4つの底辺を掲げており、長さが正確に同じでないことが明らか。正面から見た長さの方が、奥行よりも長い場合があって、いい加減といえばいい加減です。ピラミディオンの底辺の長さの1/2と高さとの比を挙げたのが図47になりますけれども、これはリンド数学パピルスで見られるセケド(skd; or sqd)を勘案して考察をおこなった結果で、さらなる研究が必要となるでしょう。
しかしピラミディオンの4つの斜面は曲面であることも多く、角度に関する判断は難しい。具体的な数値が記されていますが、これらの情報のさばき方が建築に携わる者にとって大きな問題となります。
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