「ビックリハウス」という、紙質はあまり良くない雑誌(月刊誌)が1975(昭和50)年に発刊され、これは1985年11月の最終号(130号)まで続きました。「宝島」などと並び、当時に見られたサブカルチャーの隆盛のさまを代表して示す有数の雑誌のうちのひとつ。
最初はぺらぺらの雑誌だったのですけれども、すぐその後に投稿を広く募る独自の形式を採用し始め、かなりの人気となって、後に判型を大きくした別冊(別巻)が刊行されるようになります。これが季刊「ビックリハウス Super(ビックリハウススーパー)」で、1977年から1979年まで出版されました。
「ビックリハウス Super」の後継誌(あるいは継続誌、継承誌)は月刊「スーパーアート悟空(スーパーアート Gocoo):スーパーアートゴクー、あるいはスーパーアートゴクウ」です。季刊から月刊へと変更され、最初はただの「スーパーアート」でしたが、第8号から「スーパーアートGocoo」に改称。1979年から1981年まで続きました。
後継誌は当初、「スーパーアート」ではなく、「ソピカ」という誌名を候補として考えていたことが知られています(cf. ビックリハウス Super 9、pp. 30-31、104:後述)。パブロ・ピカソ Pabro Picassoという、有名な現代絵画の巨匠のファミリーネームに基づき、このカタカナを単純に入れ替えただけの誌名は、視覚的なパロディの紹介に特化しようとしたこの雑誌の方向性を良くあらわしているように思われます。
似た命名の方法の代表はたぶん、Googleによるデジタル写真管理ソフトの「ピカサ Picasa」。
月刊「ビックリハウス」が栄えた歴史を知るには、
「ビックリハウスアゲイン」
http://www.ne.jp/asahi/gomasio/rf-2/bh.html
を訪れるのが一番です。「ビックリハウス」の刊行の後期に当時、編集作業に携わっていた管理人イノリンさんによるページ。雑誌から直接スキャンされた抜粋が具体的に掲載することも多々おこなわれていますから、とても重要。上記のHPでは、映像作家かわなかのぶひろ氏によるコラム、http://www.rundog.org/kawagochi/にて月刊「ビックリハウス」が世に公刊された経緯が詳細に披瀝され、まことに貴重な情報だと思われますが、現在はリンク切れの様子。
ここでは競合を避けるために、月刊「ビックリハウス」の別巻である季刊「ビックリハウス Super」が、季刊から月刊「スーパーアート悟空」へと変わる直前の最終号を紹介。
3誌を並べ立てて論じており、分かりにくくてすみません。検索の便宜を考え、タイトルのカタカナ表記も繰り返しています。
ビックリハウス Super(ビックリハウススーパー:ビックリハウス別冊)、季刊
発行:パルコ出版
編集:エンジンルーム
編集人:榎本了壱
出版期間:第1号(1977 [昭和52] 年1月)〜第9号(1979 [昭和54] 年2月)
後継誌:スーパーアート(第1〜7号)、後にスーパーアート悟空(スーパーアート Gocoo/スーパーアートゴクー、あるいはスーパーアートゴクウ:第8〜23号)、月刊
第1号(1979 [昭和54] 年5月)〜第23号(1981 [昭和56] 年3月)
ビックリハウス Super 第9号 (Spring 1979)
ビックリハウス別冊
JPC展作家競作集
1979(昭和54)年2月10日刊(春期号)、580円
表紙イラストレーション:中山泰
pp. (1)-2 目次
pp. (3-4) 広告
pp. 5-14 国際現在美術館 International Contemporary Museum 巨匠漫画展
p. 5 「偏執狂的批判的こまわり - サルマネール・ダレ」、島田勲
p. 6 「赤兵衛の叫び(フギャーッ!) - エドバーロ・モンク」、菊地弘光
p. 7 「耳を切る前の自画像 - ファン・コッホ」、河合悌市
p. 8 「摩訶呂尼法蓮僧之図 - 陳方志切」、小長谷朗彦+西田猛
p. 9 「スポーツカーを運転する天才バカボン - ノーミン・コックウェル」、中村豊
p. 10 「サラリーマンのいる風景1・2 - ヘルナール・ビュッファ」、マエダ・ヒオミ
p. 11 「パスカルの群れの少女 - ボール・ゼサンヌ」、山口せえご
p. 12 「つる姫の予感 - ネル・マグネット」、小林友征
p. 13 「キャプテン・ハーロックとクイーン・エメラルダス - モジリ・アネ」、竹林賢二
p. 14 「太陽の鉄兵 - 岡木大郎」、宮沢一郎
pp. 15-20 雑誌表紙パロディ
p. 15 「暗しの手帖 - 首つりひもは、どこのメーカーがよいか」、山県旭
p. 16 「太相撲 - 月面場所総決算号」、和田哲裕
p. 17 「COOKIN’ON - ミック・ジャガイモスープの作り方ほか」、八木沢重之
p. 18 「侍とメルヘン - 侍はタフでなければ生きられない」、浅野泰弘
p. 19 「ビッグ・クミッコ - <ブロマイド・レディ>」、浜崎哲治+酒井隆晴
p. 20 「ぷあ - 食後の静かなブーム『プアプリン』」、塩谷秀行+柴山宜康
pp. 21-27 特集 シーク・ア・ワード(言葉探し) Seek a word
p. 21 「アリスの生き物探し」、柳瀬尚紀
p. 22 「わが犬ピュスのあだ名いろいろ」、名木田恵子
p. 23 「レコード・レーベル」、大瀧詠一
p. 24 「小説のように」、日向あき子
p. 25 「言語の権化」、窪田僚
p. 26 「国定忠次の歌」、明石町先生
p. 27 「航海記」、日下部真紀子
pp. 28-29 「異見絵画論:レオナルド・ダ・ヴィンチ」、火野鉄平
pp. 30-31 月刊ソピカ10大公募規定
(「ビックリハウス SUPERは4月1日刊(5月号)より、ソピカと誌名も新たに月刊化します」)
p. (32) Seek a word 解答
pp. (33-34) 日刊どうも
pp. 35-36 日刊ちょっとスポーツ
pp. 37-39 「発想法について7」、戸村浩
pp. 40-41 「福田繁雄のグラフィック・トーア7 プルッツルと正十五面体」、福田繁雄
pp. 42-43 「迷図」、関三平(Maze No. 78)
pp. 44-49 「アメリカを遊園地と勘違いしては困る:アダルトコミックスの背景にあるもの」、マッド・アマノ
pp. 50-51 「映画=ナショナル・ランプーンのアニマル・ハウス」(執筆者不詳)
pp. 52-59 「シンボルマーク II」、制作=安部清次、マエダ・ヒオミ、山県旭、河合悌市、清水和男、加藤順一、南部俊安、武田学、吉川晶子、平野内智彦、宮沢一郎、和田哲裕、戸瀬秀昭、山下雅章、坪谷一利、清水健司
p. 52 安部清次、マエダ・ヒオミ
p. 53 山県旭、マエダ・ヒオミ
p. 54 清水和男、加藤順一、河合悌市
p. 55 マエダ・ヒオミ、加藤順一、安部清次
p. 56 山県旭、平野内智彦、加藤順一、南部俊安+武田学+吉川晶子、マエダ・ヒオミ、戸瀬秀昭
p. 57 山県旭、マエダ・ヒオミ、宮沢一郎、和田哲裕、加藤順一
p. 58 山下雅章、坪谷一利、清水健司、平野内智彦、南部俊安+吉川晶子、加藤順一
p. 59 坪谷一利、平野内智彦
pp. (60)-65 「ヴィジュアル・ファンタジイの新しい展開:コミックスとイラストレーションのあいだ」、小野耕世
pp. (66-68) 広告
pp. 69-73 ベスト・オブ・ビックリハウス1978、パロディ・コマーシャル総集編
p. 69 荒井孝昌、杉谷博士、桜桃太、富谷弘彰、甲斐智子、杉谷博士
p. 70 薬師神良行、小野寺紳、江渡加奈、高橋おさむ、水野はるみ、森多たかし、荒井勉、やなぎけいこ
p. 71 とみやひろあき、高橋浩徳、渡辺一恵、ゲランの光子、片桐沙恵子、辻昌宏、薬師神良行、きだまきし
p. 72 杉谷博士、村山晃史、モタイタカヒデ、斉藤淳一、加藤謙二、坂田洋子、のともあきら、高橋健治
p. 73 富谷弘彰、ジェントリー富沢、清水良郎、富谷弘彰、岩崎信幸、荒井雅視、権田均、のともあきら
pp. 74-79 ベスト・オブ・ビックリハウス1978、月例フォト・コンテスト総集編
p. 74 「あっち向いてホイ!」名和誠、「いらっしゃいませ!」金原司、「僕陸上部です。足? もちろん自信あります」おヨシ坊金時、「これ5杯が限度かな?」小林孝次
p. 75 「非常口」後藤大和、「燃料補給中」岡本史郎、「うっ、わ、我家が…」早坂幸一、「うっ、中々取れないこのマスク」石井文也、「誰でんねん。わてが、ねてる間にたんこぶ作ったのは!!」望月主悦、「我ら、偏向世代ッ!!」岩田邦彦、「立たされ坊主」曽根浩、「今月のベスト5」小野寺紳
p. 76 「非情ブレーキ!!」岡本省司、「すみからすみまでずずずいと……」小貝高妙子・和子、「ぼっ木」佐藤彰洋、「僕は、寝る子は育つという諺を信じております」中島弘人、「住宅難」金井康子、「親分、ほらあそこにUFOが!」坂田ピコ、「観察結果! 左より震度2、震度3、震度5!!」池田陽一、「人種差別ハンタ〜イ! 黄色人種だって駐車させてよ!」いまいずみゆう
p. 77 「新カップル––愛があれば年の差なんて……」杉谷博士、「僕写真写り悪いんだ」長尾勉、「異母兄弟」大島博、「これ本物の心霊写真でしょうか?」岡本幹哉、「ちきしょう! 接着剤が、効いてきやがった!」安藤岳志、「面白半分」中村幸一郎、「出口まで10ヶ月要!!」柳恵子、「無視––かわいそうな先生」(投稿者名記載なし)
p. 78 「オルカ」川崎豊志、「ママ、ここにもおしりがあるョ」山崎まこと、「今からうんこするんだから見るなよ」「うん」山口茂、「ワッハハ、ワシがミルク会社の社長じゃ」増田辺伊志代、「風見猫」井川正貴、「次の一手」高橋浩徳、「アンチ・ジャイアンツ」大木孝威、「金とひまをもてあます」三宅由希児、「母ちゃん! 長らくお世話になりました。わたしお嫁に行きます」高田風子、「ウ〜ウォンテッド!!」萩原麻理子、「愛してるよ」「あら、そんな所さわっちゃダメ!」石川よしあき、「キミ、そのヒゲはどうにかならんのかね!?」小野寺紳
p. 79 「石油のおじさん、タンクの栓が抜けとるで〜!!」上野智、「ある夏の暑い日」佐川光夫、「世界を股に掛ける男」長尾勉、「恐怖の受験地獄…か、か、顔まで脳味噌に……」長尾勉、「ホームシック」船越重子、「フィルム逆に入ってるの!」佐久間鉄朗、隔月刊・小説怪物広告
pp. (80-84) 広告
pp. (85)-91 スーパーパース
p. (85) 「牛野屋インド支店」、片上晴夫+旦昌弘
p. 86 「クラウンライタービル」、坪井泰彦、「走り過ぎた新幹線」、片上晴夫+旦昌弘、「人民寺院東京支部」、加藤順一
p. 87 「新宿新幹線」、加藤順一
p. 88 「世界的住宅難」、吉田良三、「新発売超大型冷蔵庫」、吉田良三、他
p. (89) 「(う〜ん、チョコレートまであともう少し……)」、加藤順一
p. 90 「グランドキャニオンの四代首領」、福田直美、「(なんだなんだ)」、加藤順一
p. 91 「スターダム1978」、横山新一
pp. (92)-(97) 「木村恒久のヴィジュアル・スキャンダル7 氷河期」、木村恒久
pp. (98)-100 「マッド・アマノのHOW TO パロディ6 政治の巻」、マッド・アマノ
pp. (101-102) 広告
p. (103) 季刊ビックリハウス SUPER バックナンバー
p. (104) 編集ノート、誌名改変予告
ページ数が印刷されていない場合にはカッコ内で表示。
個人による多数の投稿がうかがわれ、かつての諸作品は年月を経た後も投稿者によってネット検索がなされるかもしれないという点を勘案し、ここでは情報を比較的詳しく記載しました。
国立国会図書館や大宅壮一文庫、あるいは米沢嘉博記念図書館をもとに2014年度の完成をめざしている明治大学国際マンガ図書館等も、
「ビックリハウス」
「ビックリハウス Super」(別巻)
「スーパーアート悟空/Gocoo」(別巻後継誌)
といった3誌の全巻を、今のところ収蔵していない様子だと思われます。当時、ゲリラ的に出版されたことを良く示している有様。特に国立国会図書館法の納本制度は守られていないわけです。
若い頃に熱意を抱き、当誌に原稿を投稿された方々にとってはたいへん残念な状態。改善が望まれます。
月刊「ビックリハウス」の簡単な書誌については以下の通り。
ビックリハウス
発行:パルコ出版
編集:エンジンルーム
第1号(創刊号):1975(昭和50)年1月~第130号(最終号):1985(昭和60)年11月;
第131号(復刊号):2004(平成16)年1月。
なお関連書として「ビックリハウス驚愕大全」(1993 [平成5] 年12月)の他、「BH」や「小説怪物」といったシリーズなども出ているはずです。他に、音版ビックリハウスというものもあるらしい。
当方はこれらについて知識を持っておりません。詳しい事情を御存じの方から御教示いただけましたら幸いです。
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