2010年10月28日木曜日

Menu (ed.) 2010


古代エジプトやメソポタミアにおける労働組織を問う国際会議の会議録です。
建造組織、あるいは労働組織を広く追究する分野にとっては、非常に重要な論集であるとみなされるPowell (ed.) 1987の刊行以降に著された注目すべき出版物で、2004年の会議開催から6年経って、ようやく上梓されました。
表紙にはベルシャのジェフティヘテプの墓で見られる有名な巨像の牽引風景を載せた、さほど厚くないペーパーバック。

IFAO(フランス・オリエント考古学研究所:通称「フラ研」)から刊行されているシリーズの中の一冊で、Bibliothèque d'Étudeは昔、BdEと略されていた覚えがあるのですが、今はBiEtudと表記するようです。
近年、ここから毎年一回出されている紀要であるBIFAOの大半に、ネットで簡単にアクセスすることが可能となりました。

http://www.ifao.egnet.net/bifao/

1901年の創刊ですから、100冊以上あって、通覧するのも大変ですが、自宅で飲みながら無料でゆっくり見ることができるというのは、たいへん素晴らしい。
大規模に研究論文を網羅する、いかにも便利そうなデータベース化をめざしながらも、お金はちゃんといただきますよというアメリカ主導によるJSTORのやり方なんかは完全に無視して、一方的にタダで公開する、というのもフランスらしい大胆な選択。
会議録の内容は多岐にわたっています。

Édité par Bernadette Menu,
L'organisation du travail en Égypte ancienne et en Mésopotamie.
Colloque AIDEA (Association Internationale pour l'étude du Droit Égyptien Ancien) - Nice 4-5 octobre 2004.
IF 1005, Bibliothèque d'Étude (BiEtud) 151
(Institut Français d'Archéologie Orientale (IFAO), Le Caire, 2010)
vi, 192 p.

Sommaire:

Laure Pantalacci,
Préface (p. 1)

INTRODUCTION

Bernadette Menu,
Présentation générale (p. 3)

Robert Carvais,
Pour une préhistoire du droit du travail avant la Révolution (p. 13)

I. LES MÉTIERS ET LE DROIT CONTRACTUEL DU TRAVAIL

Schafik Allam,
Les équipes dites meret spécialisées dans le filage-tissage en Égypte pharaonique (p. 41)

Sophie Démare-Lafont,
Travailler à la maison. Aspects de l'organisation du travail dans l'espace domestique (p. 65)

Francis Joannès,
Le travail des esclaves en Babylonie au premier millénaire av. J.-C. (p. 83)

Barbara Anagnostou-Canas,
Contrats de travail dans l'Égypte des Ptolémées et à l'époque augustéenne (p. 95)

Patrizia Piacentini,
Les scribes: trois mille ans de logistique et de gestion des ressources humaines dans l'Égypte ancienne (p. 107)

II. GESTION DU TRAVAIL ET ORGANISATION DES CHANTIERS

Christopher Eyre,
Who Built the Great Temples of Egypt? (p. 117)

Laure Pantalacci,
Organisation et contrôle du travail dans la province oasite à la fin de l'Ancien Empire.
Le cas des grands chantiers de construction à Balat (p. 139)

Katalin Anna Kóthay太字,
La notion de travail au Moyen Empire. Implications sociales (p. 155)

Bernadette Menu,
Quelques aspects du recrutement des travailleurs dans l'Égypte du deuxième millénaire av. J.-C. (p. 171)

Robert J. Demarée,
The Organization of Labour among the Royal Necropolis Workmen of Deir al-Medina.
A Preliminary Update (p. 185)

序文は、カール・マルクスの「資本論」第1巻の引用から始められており、労働組織への注視が古代社会の構造を解き明かす上で重要なトピックであることを改めて強調しています。新王国時代後期のデル・エル=メディーナ(ディール・アル=マディーナ)の資料はここでも尊重されていますけれども、この村の存在を普遍的に扱って、古代エジプトにおける他の時代へ適用することについてはより慎重な姿勢を示しており、一方、中王国時代に属するpReisner(cf. Simpson 1963-1986)などへの言及は、近年の研究成果が反映され、増加しています。

Demaréeによる最後の論文は、デル・エル=メディーナ研究の現在の水準と今後の課題を語っており、有用。メトロポリタン美術館や大英博物館で所蔵されている未刊行の第18王朝に属するオストラカについて、報告書の作成を控えめながら促しています。
新王国時代におけるヒエラティックの代表的な読み手として名をなすAllam、Eyre、Demaréeたちが今、何を考えているかを知りたい学徒たちにとっても貴重な本。


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