2011年5月26日木曜日

BACE 21 (2010)


オーストラリアのエジプト学研究所(Australian Centre in Egyptology: ACE)から刊行されている紀要の最新号。確か、2011年の初頭に送られて来たもの。目次は未だACEの方で公開していないようなので、長くなりますが記します。
BACEという略称で呼ばれますが、この言い方はあんまり専門家の間でも一般的ではないかもしれません。
A5版という判型はエジプト学に関連する雑誌の中では小さい部類に属し、

Discussions in Egyptology (DE)
Göttinger Miszellen (GM): Beiträge zur ägyptologischen Diskussion

や、あるいは初期の

Journal of Mediterranean Archaeology (JMA)

がこの大きさでした。灰色の表紙のペーパーバックです。


Bulletin of the Australian Centre in Egyptology (BACE), vol. 21 (2010)
166 p.

Contents:

Editorial Foreword (p. 5)

G. E. Bowen, L. Falvey, C. A. Hope, D. Jones, J. Petkov, L. Woodfield,
"The 2010 Field Season at Deir Abu Metta, Dakhleh Oasis" (p. 7)

C. A. Hope, D. Jones, L. Falvey, J. Petkov, H. Whitehouse, K. Worp,
"Report on the 2010 Season of Excavations at Ismant el-Kharab, Dakhleh Oasis" (p. 21)

Caroline Hubschmann,
"Beer Jars of Mut el Kharab, Dakhleh Oasis: Evidence of Votive Activity in the Third Intermediate Period" (p. 55)

Beverley Miles,
"Enigmatic Scenes of Intimate Contact with Dogs in the Old Kingdom" (p. 71)

Boyo Ockinga,
"A Late Period Tomb Structure in the Teti Cemetery North?" (p. 89)

Ali Radwan,
"The Louvre Stela C 211" (p. 99)

K. N. Sowada, G. Jacobsen, F. Bertuch, A. Jenkinson,
"The Date of a Mummified Head in the Nicholson Museum, Sydney" (p. 115)

Elizabeth Thompson,
"The Engaged Statues of the Old Kingdom Tombs at Tehna in Middle Egypt" (p. 123)

Lubica Zelenková,
"The Royal Kilt in Non-Royal Iconography?: The Tomb Owner Fowling and Spear-Fishing in the Old and Middle Kingdom" (p. 141)

日本の筑波大学隊が調査を進めているテヘナ(アコリス)の墓内の彫像に関する報告がありますけれども、これらはG. W. フレーザーが19世紀の終わりに調べた遺構で、それ故に「フレーザーの墓」と呼ばれています。マスタバ墓ですが、なんと懸崖からマスタバのかたちを掘り抜いて造られており、古代エジプト史上、稀な例となっています。斜面に造られた岩窟のマスタバとして知られている少ない古王国時代の墓。
サッカーラやギザの集合墓地などを中心に考えていると、マスタバというものは必ず平地に建っており、煉瓦や石材の組積によって建造されるものだという先入観が生じますが、これをまったく裏切っている遺跡で、上の部分、すなわち屋根から掘り出したはずですから、床の平面計画から考える普通の場合と異なって、全体の設計計画寸法の決定がどのように進められていったのかといった素朴な疑問がわきます。

古代エジプトの墳墓を簡略にまとめたものとしては、Dodson and Ikram 2008を参照。

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