2009年9月29日火曜日

Vassilika 2009


閉幕間際の上野のトリノ博物館展に再び行って、今年出版された英語版のガイドブックを購入。薄手の本ですが、良く見たらいろいろと載っています。
近年、館長に就任したE. ヴァシリカによる、トリノ博物館の活性化の一環による刊行物と思われます。

Eleni Vassilika,
photographs by Giacomo Lovera, edited by Silvia Cosi, layout by Francesca Lunardi,
Masterpieces of the Museo Egizio in Turin:
Official Guide

(Fondazione Museo delle Antichità Egizie di Torino, Scala Group, Firenze, 2009)
127 p.

あくまでも遺物のカタログではなく、一般向けのガイドブックとしています。このため、ビブリオグラフィーは一切なし。ただしインヴェントリー番号は付記されています。トリノ博物館のスタッフへの謝辞の他に、G. T. マーティンへの感謝の言葉が最終ページで見られる点も書いておきます。

ほとんどのページをカラーで印刷し、縦長の造本で、ペーパーバック。しゃれた構成です。収蔵品は古いものから順番に並べており、ヴァシリカによる序文が掲載されている他は、あってもいいと思われる目次や博物館の平面図などが省かれています。トリノ博物館は大規模な展示替えが予定されているので、妥当な選択なのでしょう。昨年、開催された第10回国際エジプト学者会議(The 10th International Congress of Egyptologists: ICE)におけるトリノ博物館の館員による発表で、博物館の改装の件は伝えられていたような記憶があります。
ヴァシリカによる他の博物館関連の刊行物としては、

Eleni Vassilika,
with contributions from Janine Bourriau, photography by Bridget Taylor and Andrew Morris,
Egyptian Art.
Fitzwilliam Museum Handbooks
(Cambridge University Press, Cambridge, 1993)
viii, 139 p.

があって、これも見やすい小型の出版物でした。

トリノ博物館と言えば、文字史料だったら王名表を記したパピルス、ワーディ・ハンママートの地図を描いたパピルス、王家の谷の王墓平面図を示したパピルスなどがまず思い浮かびますが、これらをカラー写真で掲載。とても便利です。
写真が小さいのは残念ですけれども、綺麗に印刷されており、特にワーディ・ハンママートの地図はありがたい(p. 102)。ラメセス4世の王墓の平面図のカラー写真(p. 104)も貴重。探そうと思うと結構、面倒でした。
ここら辺の話は、JEA 4, Parts II-III (1917)や、Leospo 2001、またLópez 1978-1984 (O. Turin)などの項でも触れています。

永井正勝先生がすでにこの展覧会における見どころを、内覧会に出席された後にブログで紹介。

http://mntcabe.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/index.html#entry-59226268

非常に些末的な話で恐縮ですが、個人的には、女性や子供の守護神として知られているカバの化身であるタウェレト(タウレト:他にもタ・ウレト、タ・ウェレトなど。あるいはトゥエリス、トエリス)女神像の紹介が興味深かった(p. 82)。
この女神が何色に塗られていたのか、もし調べようと思ったら、時間がかかります。アンクの文字の上に片手を置いたタウェレト女神の姿が、確かパピルスのひとつにうかがわれたと思いますが、その他の例となると色が塗られていない場合が多く、困惑していたところです。
赤地に白の斑点というのは面白い。ひょっとして、カバの汗が赤いということと関係あるんでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿