2009年9月24日木曜日

Warner 2005


カイロの古い街並みで見られるイスラームの歴史的建造物の平面を逐一、大きな地図上に示した労作です。副題では"A Map"となっているけれども、掲載されているのは大版の折り込み地図が31枚。分割されて所収がおこなわれています。
ゲジラ島とローダ島の東方に位置するナイル川岸辺の当該地域の地図の縮尺は1/1250。小さな住宅についても、かろうじて平面が分かる大きさです。
大判の本で、すべて手書きの大図面が何と言っても素晴らしい。
ARCE Conservation Seriesの第1冊目。

Nicholas Warner,
The Monuments of Historic Cairo:
A Map and Descriptive Catalogue.

American Research Center in Egypt (ARCE) Conservation Series 1.
American Research Center in Egypt (ARCE) Edition
(American University in Cairo (AUC) Press, Cairo, 2005)
xvi, 250 p., 31 maps.

Contents:
Foreword by J. L. Bacharach and R. K. Vincent, Jr. (vii)
Acknowledgments (ix)
Preface (xii)
Introduction: Cartography, Architecture, and Urbanism in Cairo, AD 1500-2000 (p. 1)
Note on Sources, Cartography, and Architectural Drawings (p. 82)
Descriptive Catalogue (p. 87)
Glossary (p. 192)
Abbreviations (p. 194)
References (p. 195)
Index of Buildings by Number (p. 202)
Index of Buildings by Name (p. 220)
Index of Buildings by Date (p. 243)
Maps (251)

著者のWarnerは、ARCE Conservation Series 2に当たるクセイルの砦のプロジェクト(Le Quesne 2007)にも参加している建築研究者。
序文では、

"The twentieth-century English poet W.H. Auden wrote that 'poetry makes nothing happen: it survives in the valley of its saying.' Like poetry, 'The Monuments of Historic Cairo' is in a sense nothing more than a record, documenting a moment of a city.(中略)The poetry of these maps lies in making Cairo's memory survive, and it is their 'saying' that constitutes Nicholas Warner's achievement."

と、詩人オーデンの句を引きながら、この本の価値が強調されています。
252ページ目の"Map Key"を見るならば、かつてあったけれども、もうなくなってしまったイスラーム建築の位置なども示されていることが了解され、建物の上階から飛び出ている部分の輪郭を点線で示すなど、細かく丁寧に描き分けた工夫の跡も良く分かります。
文章による建物の簡潔な説明も充実しています。シタデルやアイユーブ朝の城壁、またイブン・トゥールーン・モスクに関する記述などが最も長く、それぞれ1ページほどの分量。
索引では建物番号、建造物名、建造年代から調べることができます。

この本はAmerican University in Cairo Pressから出版されているので、タハリール広場の脇の大学キャンパス近くまで行った折に購入する方法もありますけれども、カイロの書店案内というものが日本語で出ており、サイトでも情報が公開されていますので、どこで売っていそうだという目安がつき、カイロで長居をする時にはこれが非常に便利です。

日本学術振興会カイロ研究連絡センター、
平井文子、原山隆広、橋爪烈、勝沼聡、竹村和朗、亀谷学

カイロ書店案内 2004
日本学術振興会カイロ研究連絡センター、カイロ、2004年
(iii)+ii, 123 p., 28 maps.
http://asj.ioc.u-tokyo.ac.jp/html/guide/cairo/c_s_f.html

Les Livres de Franceの閉店状態をサイト版では伝えるなど、改訂がなされていますが、一方で旧ナイル・ヒルトン・ホテルのショッピング・モールの地下にあったL’Orientale (旧L’Orientaliste)の動向については最新情報が反映されておらず、残念。
もちろんこれは贅沢を言っているわけで、歩いて本屋さんをくまなく調べるという、この貴重な情報誌を作成する上でおそらく大変であったろう労力に改めて敬意を表します。
ありがたく使わせていただいている次第。特に調査に関わる者にとっては、冊子体の方にエジプトの地図屋さん(p. 102, L-7: ドッキ、ミサーハ広場周辺)が明記されている点が重宝しており、何回も助けてもらっています。

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