2010年7月4日日曜日

Herz and Waelkens (eds.) 1988


古代における大理石の用法を扱った国際学術会議の報告書。古代ローマの石切場、また石の輸出入に関する研究はワード・パーキンスによって本格的に開始されましたが、その遺志を継承しての国際会議。ワード・パーキンスについては、Dodge and Ward-Perkins (eds.) 1992などを参照。
岩石学、経済学、技術史学、考古学、建築学など、多岐にわたる学際的な内容です。

Norman Herz and Marc Waelkens (eds.),
Classical Marble:
Geochemistry, Technology, Trade.

Proceedings of the NATO Advanced Research Workshop on Marble in Ancient Greece and Rome:
Geology, Quarries, Commerce, Artifacts.
Il Ciocco, Lucca, Italy, May 9-13, 1988.
NATO Advanced Science Institutes (ASI), Series E
(Applied Science), Vol. 153
(Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, 1988)
xvi, 482 p.

大理石は古代ローマや古代ギリシアにおいて好んで使われた石材で、これを専門的に研究する特殊な学会もあります。

ASMOSIA
(Association for the Study of Marble and Other Stones used In Antiquity)

というのがそれで、同じ石材を前にしながらも、立場が違うとこんなにも見るところが異なるのだという点が面白い。論考の多くは古代社会の経済に関わる研究と、採掘技法や労働組織についての注視、また科学分析を通じての時代・地域の同定、そういうことになります。
これらの論考をまとめて見据えようという難しいことをやっているのが共同編集者のHerzとWaelkensで、ふたりともこの分野では第一人者です。

このような本を手にすると、大理石という石の魅力が未だ強く放たれているという事実を思い知らされます。透過性があり、柔らかく、艶やかさを有するという独特の素材。
透き通る人間の肌と似た質感がある唯一の石と言ってよく、石膏製の模像と実物の大理石像との違いは大きい。

エジプト学が、ここにどういうかたちで関係するかはしかし、微妙です。もっと相互の論議がなされてもいい。

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