2009年7月29日水曜日

Clark (ed.) 2007


カンボジアのシェムリアプに行くと、アンコール地域のクメール建築がたくさん見られますが、それらの中で、たぶん最も複雑怪奇な構成を呈しているバイヨン寺院に関する本格的な研究論文集です。数年前から予告されながら、なかなか出版されませんでした。

Joyce Clark ed.,
Bayon: New Perspectives
(River Books, Bangkok, 2007)
403 p.

執筆陣は非常に豪華で、

Joyce Clark
Ang Choulean
Olivier Cunin
Claude Jacques
T. S. Maxwell
Vittorio Rovera
Anne-Valerie Schweyer
Peter D. Sharrock
Michael Vickery
Hiram Woodward


といったメンバーが、各研究分野の立場から執筆をおこなっています。バイヨン研究にとっては必読の、きわめて重要な書です。
この中で一番長く書かれているOlivier Cuninによる論考、

"The Bayon: An Archaeological and Architectural Study"
(pp. 136-229)

は圧巻で、多数の図版や加工した写真を交えて、何回も増改築が繰り返されたバイヨン寺院の建設工事の模様を、立体的に図示することが試みられています。久々に面白い建築報告を読むことができました。壮大で非常に複雑な立体パズルだと言えるかも知れません。

イントロダクションでVickeryは、

"Readers will also note serious disagreement, especially between Jacques and Cunin, on the dating, both absolute and relative, of the phases of the Bayon's construction; and their views, presented here, differ from earlier proposals, for example by Parmentier and Dumarçay." (p. 18)

と、クニンとジャックの論が異なることを指摘しており、これは特に"16 courtyard passageways (structures A-P)"がいつ建てられたかに関しての見解の違いで顕著となっていますが、建築学からは、ジャックの論が成り立たない点はきわめて明瞭。
石のかたちや目地を見ることで、どちらの石が先に設置されたのかは分かります。立体的な造形の把握に疎いため、ジャックは致命的な間違いを犯しています。
砂岩における微弱な磁気の傾向(帯磁率)を検出することで、石材の切り出された場所が異なる点を指し示せるようになりましたが、その結果もクニンの説を支持しています。
Dumarcay 1967-1973にてクニンの博士論文がダウンロードできることはすでに記しましたが、この論考は非常に重要。

Olivier Cunin,
De Ta Prohm au Bayon, Analyse comparative de l'histoire architecturale des principaux monuments du style du Bayon, 4 vols.
(Nancy, 2004)

Tome I: Analyse comparative de l'histoire architecturale des principaux monuments du style du Bayon
(viii), 484 p.
Tome II: Contribution à l'histoire architecturale du temple du Bayon
(iii), 181 p.
Annexe I: Documents graphiques
(i), 313 p.
Annexe II: Documents photographiques
(i), 98 p.

http://tel.archives-ouvertes.fr/tel-00007699

Clark編集のこの本は比較的細かい字でびっしりと印刷された書籍で、通常通りの文字の大きさであったなら、きっと600ページを超える本になっていたでしょう。
サンスクリット語、ヴェトナム語・チャム語、クメール語の専門用語集が巻末に付されています。
註も充実しています。

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