ただ7ページに"Aydos"と脱字があって、本の題でも用いられている大事な地名が間違って記されており、この書籍は本当に大丈夫なのかと思わせますが、ここは編集者による文章で、オコーナーが書いた部分ではありません。
David O'Connor,
Abydos:
Egypt's First Pharaohs and the Cult of Osiris
(Thames & Hudson, London, 2009)
216 p.
Contents:
General Editor's foreword, p. 7
Preface, p. 9
Introduction, p. 15
PART I Abydos and Osiris, p. 22
1 The Discovery of Abydos, p. 22
2 Osiris - Eternal Lord Who Presides in Abydos, p. 30
3 The Temple of Seti I, p. 42
PART II Life Cycle of a Sacred Landscape, p. 62
4 The Rediscovery of Abydos, p. 62
5 The Evolution of a Sacred Landscape, p. 70
6 The Expanding Landscape of the Middle Kingdom, p. 86
7 The Landscape Completed: Abydos in the New Kingdom, p. 104
8 The Climax of the Osiris Cult, p. 120
PART III Origins of the Abydos Landscape, p. 136
9 The Royal Tombs of Abydos, 136
10 The Mysterious Enclosures of Abydos, p. 158
11 Boat Graves and Pyramid Origins, p. 182
12 Abydos: Summing-up, p. 201
注目されるのは第3部で、G. ドライヤーが発掘したU-j墓の検討、そこから見つかった「世界最古」と言われる文字の読解、中が空っぽの葬祭周壁の解釈や、14隻並んで発見された木造船の正体、またこれらがピラミッドの歴史とどうつながるか、などという点にありますが、問題をそれぞれ分かりやすく説明しており、面白い。
DjerとQa'aの墓の復原については、ドライヤーの説に対し、祠堂も付設した自説を、立体図も交えて紹介しており(Fig. 85)、こういうところにオコーナーの考え方があらわれています。ただ、第3王朝の階段ピラミッドを、それまでのマウンド墓、祠堂、葬祭周壁によるセットのひとまとめにしたものと捉えようとして、時代を遡ったDjerとQa'aの墓にも祠堂を設けた復原を提示している感じも若干、与えます。
常に大きく構想しようとするこの人の姿勢が、時として強引さを与えかねないということ。
天に登るための階段をピラミッドは象徴しているのではという、専門家も良く言っている考え方を明確に否定しており(pp. 198-199)、この点は賛成。
ここ20年ほどで、ピラミッドがどのような過程で生まれたかに関する研究が進みました。アビュドスのマウンド墓や、マスタバの中に隠されたマウンド状の覆いの様相が詳しく分かってきたからです。その要点が語られています。
註の数は抑え気味にされて、読みやすさが第一に勘案されていることが分かります。カラーページもいくらか差し挟まれています。
5ページにわたるSelect Bibliographyが巻末に付され、細かい活字で数百の文献を紹介。
"The definitive account of one of Egypt's most important ancient sites, written by the world authority"
という宣伝文句は、嘘ではありません。
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