2011年12月31日土曜日

Shoukry 2010


マルカタ王宮に関する最新の論考。
「マルカタ」の綴りは、この論文では"Malqatta"となっており、ここにはアラビア語の表音についての普遍的な難しい問題と、地名の意味をあらわす努力、及びマルカタが位置するルクソールの現地での方言の表記の問題が同時にあらわれ出ています。
マルカタ王宮については前にも何回か書きましたけれど、"Malkata"、"Malqata"、"Malgata"、"Malgatta"、"Malqatta"などのヴァリエーションが多数あることが注意されます。

Nermine M. Shoukry,
"Malqatta, une résidence royale d'Amenhotep III à Thèbes-Ouest",
Memnonia, Cahier supplémentaire 2.
Colloque international: Les temples de millions d'années et le pouvoir royal à Thèbes au Nouvel Empire,
sciences et nouvelles technologies appliquées à l'archéologie - Louqsor, 3-5 Janvier 2010.
(Le Caire 2010), pp. 209-227.

この書の目次は、次のサイトで見ることができます。

http://www.mafto.fr/publications/cahiers-supplementaires-des-memnonia/

Memnoniaは比較的若い専門誌で、1990年の創刊。もともとラメセウム(ラメセス2世葬祭殿の通称)の救済を目的として刊行された雑誌でした。緑色の鮮やかな表紙が印象的。その別巻にて国際会議の記録が出版されました。
ここで発表されているShoukryの論考は、ヘルワン大学で執筆されたという博士論文の概要に該当するらしく、このドクター論文が刊行されることを望みます。
マルカタ王宮に関する書誌を、もし手軽にネットで調べるということであるならば、

iMalqata:
http://imalqata.wordpress.com/

のサイトにおける「レポート」の項や、

UCLA Encyclopedia of Egyptology:
http://uee.ucla.edu/index.htm
http://escholarship.org/uc/nelc_uee

における「マルカタ」の項、あるいは

Theban Mapping Project:
http://www.tmpbibliography.com/resources/bibliography_6_other_areas_wb_malqata.html

のページなどがお勧めです。
しかしこうした場合には一次資料をまず提示することが優先されますので、いずれの文献リストにもO'Connor and Cline 1998の中のR. Johnsonによる論考やD. O'Connorの考察、またZiegler (ed.) 2002の中のDorothea Arnoldが書いている論文といったものが紹介されておらず、とても残念。
マルカタ王宮の全体構成を把握するには、本当はこれらの近年の論考から目を通す方が手っ取り早く、また基本的な問題を把握する上で重要だと思われます。
KellerShortlandによる科学分析を主とした論考も、近年は引用される度合いが増えてきました。これらの論文はメトロポリタン美術館による工房の発掘によって出土した遺物に基づいて書かれていますが、実際の工房に関する考古学からの具体的な報告は非常に乏しく、20世紀初期のBMMAの短報、あるいはHayesによるJNESの連続論文による断片的な報告のみが残されているだけで、部分的な再発掘をおこなったKemp and O'Connor 1974との併読が必要です(Site Jに関する記述を参照)。
水中考古学の専門誌に掲載されたこの論文はしかし、国内では入手しづらくて、苦労する文献。iMalqataのサイトでは現在、この論文をダウンロードできる状況にありますが、著作権を考慮せずにアップしていると思われ、いつまで閲覧できるかは不明。

Shoukryの論文でも、挙げられている文献はきわめて限定されています。この国際学会では考古学への最新の科学技術の適用をテーマとしているため、これにあわせて唐突に顔料の化学記号が出てきたりして戸惑いますけれども、この点は仕方ありません。王宮都市の紹介は施設ごとに丁寧な記述がなされています。非西欧の研究者によるマルカタ王宮の考察が進められているという点は、非常に喜ばしい。
マルカタ都市王宮内に建てられた諸施設の建造の順番にも考察が及んだらもっと良かったでしょうが、このトピックは今後、討議されるべき事項。

アマルナ王宮との比較、特に似ているところや共通点を考えることもおこなわれるべきですが、当該分野の権威であるバリー・ケンプが「ふたつの王宮はだいぶ違う」ということをすでに言ってしまっている(Kemp and Weatherhead 2000)ので、本格的に取り組む人はしばらく出てこないかもしれない。
臆することなく、ふたつの王宮を見比べて共通点を指摘するような人が、新しくこれから出てくることを期待しています。

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