Christiane Ziegler (ed.),
The Pharaohs
(Rizzoli International Publications, New York, 2002)
512 p.
豪華な執筆陣が特色で、イタリア・フランス・ドイツ・アメリカ・スイスなどの有名な研究者たちが各節を分担しています。それらを纏めているジーグラーは、ルーヴル美術館古代エジプト部門長。最初の100ページで王朝の歴史が記されています。
The Pharaohs and History:
"The Predynastic Period", by Günter Dreyer, Christiane Ziegler
"The Old Kingdom", by Alessandro Roccati
"The Middle Kingdom", by Sydney H. Aufrere
"The New Kingdom", by David P. Silverman
"The Third Intermediate Kingdom", by Mamduh el-Damaty, Isabelle Franco
"The Late Period", by Edda Bresciani
錚々たる権威者たちによる通史で、展覧会のカタログとしては稀有な例。
この他、征服者としての王についてはNicolas Grimalが、宗教に関してはClaude Trauneckerが、建設者としての王についてはRainer Stadelmannが、王墓に関してはErik Hornungが執筆しています。いずれも第一級の専門家ばかりです。
164ページにはカルナック神殿の平面図が、建造時期別に、つまり王別に色分けされて提示されています。いざ探そうと思うと、こういう図はなかなか見つかりません。
メトロポリタン美術館のDorothea Arnoldが王宮建築に関して執筆しており、マルカタ王宮とネチェリケト王の階段ピラミッド複合体におけるセド祭のための広庭とを比較しています。内容は画期的で、residential palaceではないことが強調されています。
第3王朝と第18王朝の建物を、しかも機能がまったく異なるもの同士を比べるのは本当は無茶というものですが、セド祭関連の建物については類例がきわめて限られているために、こうした方法がおこなわれるわけです。しかしこの指摘はとても重要。
カタログの説明文のうち、388-389ページの部分だけが異様に長く、変わっています。"introduction"まで用意されており、ここだけがエジプト学者による執筆ではなく、古代遺物を出品したコレクター自身が書いた文章。本の編集者と、一悶着がどうやらあったことらしいことがうかがわれる箇所です。
年表がpp. 496-497に掲載されていますが、前半はJ. BainesとJ. MalekによるCultural Atlas of Ancient Egypt、また後半はJ. von BeckerathのHandbuch der ägyptischen Koenigsnamenを使っていることを小さく注記として印字しています。
こういうのも珍しい。古代エジプトでは絶対年代が用いられますが、いくつかの説があり、一致していません。異なるものをつなぎ合わせて使う例は、あんまりないかと思われます。
0 件のコメント:
コメントを投稿