2009年2月11日水曜日

Sliwa 1975


古代エジプトの手工芸、特に木工に関する研究書。家具だけではなく、船なども対象に含んでおり、このように包括的に扱うものはきわめて少なく、たいへん貴重です。古代エジプトにおける木工の仕口にも言及。
著者はポーランドの研究者。

Joachim Sliwa,
Studies in Ancient Egyptian Handicraft: Woodworking.
Universitas Iagellonica acta Scientiarum Litterarumque CCCCIV.
Schedae Archaeologicae, Fasciculus XXI:
Studia ad Archaeologiam Mediterraneam Pertinentia Vol. IV
(Nakladem Uniwersytetu Jagiellonskiego, Krakow, 1975)
83 p., 32 pls.

Contents:
Introduction (p. 5)
I. Application of Wood. Raw Materials (p. 9)
II. Tools. Workshop (p. 21)
III. Principal Working Techniques and Main Fields of Production (p. 45)
IV. Remarks Concerning the Organization of Labour and the Social Position of Craftsmen Engaged in Woodworking (p. 65)
V. Reliefs, Models and Paintings with Woodworking Scenes (p. 73)
VI. Selective Bibliography (p. 77)

出版から30年以上経って、この目次で見られるトピックをそれぞれ充実させた本が何冊か出ています。樹種を挙げている箇所をSliwaBeekmanの大著に多くを負っていますが、エジプトの樹木についての本はすでに数冊、他の著者によって出版がなされました。木工の工具についてはKillenArnold太字などが新たに論じています。また船に関する絵画資料集も、かなり詳しいものが出されました。

いくらか内容が部分的に古びたとは言え、しかし木材の加工技術を総合的に追うことは今なお、充分には突き詰められていないように感じます。その基本的なモティーフを早くから見つけ出していた論考。

出版元のヤギェウォ大学はポーランドで最も古い歴史を誇る大学として有名。創設は14世紀に遡り、コペルニクスなどを輩出したことで知られていて、たかだか100年ほどしか経っていない日本の大学などとは格が違います。イタリアのボローニャ大学はヨーロッパ最古の大学ですけれども、こうした歴史ある大学は相互の繋がりを図って「コインブラ・グループ」と呼ばれる連盟を形成しています。アメリカの大学制度に対する批判を含む動向。

なお、Sliwaの献呈論文集が出版されているようですが未見。

Les civilisations du bassin mediterraneen:
Hommages a Joachim Sliwa
(Universite Jagellone, Institut d'archeologie, Krakow, 2000)
457 p.

ポーランドやハンガリーなどにおけるエジプト学の動向を、日本から把握するのはなかなか難しく思われます。

0 件のコメント:

コメントを投稿