2009年2月21日土曜日

Schijns 2008


ダクラ・オアシスの煉瓦造建築を扱った本で、ダクラ・オアシス・プロジェクトにおける第10巻目の報告書。かなり前から刊行の予告が出ていた書で、ようやく出版の運びとなったようです。

Wolf Schijns,
with contributions from Olaf Kaper and Joris Kila,
Vernacular Mud Brick Architecture in the Dakhleh Oasis, Egypt, and the Design of the Dakhleh Oasis Training and Archaeological Conservation Centre.
Dakhleh Oasis Project: Monograph 10
(Oxbow Books, Oxford, 2008)
vii, 56 p.

Contents:
Chapter I: Introduction to the Project
Chapter II: Geographical and Historical Background
Chapter III: Description of the Mud Brick Architecture
of Dakhleh
Chapter IV: Case Studies of Houses
Chapter V: The D.O.T.A.C.P. Centre

日乾煉瓦の建物を主題とする本は、実はあんまり見ることができません。その意味でこの本は期待されていたのですが、案外と薄いペーパーバックの冊子で、残念でした。

序文には「1997年における踏査(field trip)に基づく報告」とありますけれども、全部で60ページ程度の報告がどうして出版に11年もかかったのか、謎です。写真図版も1997年に撮影されたものであるらしく、本のほぼ半分は図版等で用いられていますから、文章の分量は30ページほど。

特に第4章のケース・スタディでは3軒の家が紹介されていますが、ほとんどが図版と写真で、文章による説明があまりなされていません。2番目の"House 2 in Bashendi"に至っては、文章が11行だけです。

古代の泥煉瓦(日乾煉瓦)についてはスペンサーがカタログを作成し、ケンプが比較的長めの解説を書いたりしています。ラメセウム(ラメセス2世葬祭殿)の穀物倉庫に関しては、かなり詳細な煉瓦の積み方などを記した報告書が出ており、重要。「古代エジプト建築のヴォールト」と題する2巻本も参考になります。

Salah el-Naggar,
Les voutes dans l'architecture de l'Egypte ancienne,
2 vols.
Bibliotheque d'Etude (BdE) 128
(Institut Francais d'Archeologie Orientale (IFAO),
Le Caire, 1999)
ii, 466 p. + ii, 333 p.

煉瓦についてはしかし、まだ触れられていない点がいくつかあって、例えば煉瓦の表と裏が判別できることなど、まだ誰も書いていないように思われます。平滑で中央が凹みがちで、時折指跡やスタンプが残っているのが表面で、小石や砂、また土器片などが張り付き、比較的荒くて縁が張り出しているのが裏面です。
煉瓦の表と裏を識別することにどのような意味があるかと反問する向きもあるでしょうが、裏面では縁が突出するため、煉瓦を計測する時には大きめの値が導き出されてしまいます。泥煉瓦の大きさをもとに建物を比較して調べる際には、注意が必要。

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