Barry J. Kemp and Gillian Vogelsang-Eastwood,
assisted by Andrew Boyce, Herbert G. Farbrother, Gwilym Owen and Pamela Rose,
The Ancient Textile Industry at Amarna.
68th Excavation Memoir
(Egypt Exploration Society, London, 2001)
(iv), 498 p.
この時代の衣服を探ると言うことになると、情報が限られます。建築家カーの墓などからまとまった量の衣服が箱に収められて見つかってはいるものの、壁画に描かれた絵画資料との対照が必要。
また文字資料にも記載されることがあって、特にヤンセンの大著、Commodity Prices from the Ramessid Period (Leiden, 1975)により、衣服の値段が判っています。
ヤンセンの衣服に関する新たな論考は昨年出版されたばかり。ただし、これは語彙を探った論考で図版はまったく掲載されていません。
Jac. J. Janssen,
Daily Dress at Deir el-Medina:
Words for Clothing.
Golden House Publications Egyptology 8
(Golden House Publications, London, 2008)
vi, 112p.
さて、本書の著者の一人は古代エジプトの衣服の専門家で、
G. M. Vogelsang-Eastwood,
Pharaonic Egyptian Clothing.
Studies in Textile and Costume History 2
(Leiden, 1993)
220 p.
などを出している人。古代エジプトの衣服については現在、この人の本がほとんど唯一の詳しい書となります。
他にも厚い本、Riding Costume in Egypt (Leiden, 2003)など。
全体はふたつに分かれており、前半は労働者集合住居から出土した布片に関する報告、後半はアマルナにおける布の手工業生産を分析しています。
丸い布片がいくつか出土しているらしいのですが、これは長方形の布地の中央に首を通すために切り抜かれた丸穴に対応する布片と考えられており、一枚の布地から作られた簡単な衣服の展開図も紹介されています。
実際に紡績車や木製の機織り機の小さな断片なども出土しており、これらをもとにして機織り機そのものを復原することもおこなっているのが後半の特徴。しかしながら、この本を単なる技術報告に終わらせていないところが注目され、メディネット・グローブとの比較もなされていて、非常に層の厚い論考が提示されています。
第11章「アマルナにおけるテキスタイル・インダストリー」は全部、ケンプの執筆によるもの。分かりやすい図解もケンプによっています。複雑な機構の図示といったことが得意な人なのだと言うことが良く了解されます。
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