2009年4月30日木曜日

Bietak (Hrsg.) 2001


古代ギリシア建築と古代エジプト建築との接点を探るため、ウィーンで開催された国際コロキアムの報告書。薄手の本ながら、重要な論考が収められています。コロキアムは、シンポジウムと似たような専門家による会合ですが、より専門性が高く、通常は少人数でおこなわれます。

Manfred Bietak (Herausgegeben von),
Archaische Griechische Tempel und Altegypten.
Internationales Kolloquium am 28. November 1997 am Institut fur Agyptologie der Universitat Wien.
Untersuchungen der Zweigstelle Kairo des Osterreichischen Archaologischen Instituts, Band XVIII
(Verlag der Osterreichischen Akademie der Wissenschaften, Wien, 2001)
115 p.

エジプト建築がどこまでギリシア建築に影響を与えたのかに関しては、実は多くが分かっていない状況です。ギリシア建築研究の大御所クールトンも、この点に関してはほとんど何も言っていない。
ウィーン大学のビータックのもとで、この会合が開かれている点は注目されるべき。たぶん彼のところ以外では、こうした企画は困難と思われます。「古代エジプトにおける住居と王宮」(1996年)が出版された時と同じシリーズにて刊行。
地中海を取り巻く諸文明を踏まえた研究調査を進めているビータックならではの書。

イスミアの前身神殿についての、建造技術を扱った論考は非常に興味深い。小振りの石を用いて建造された神殿ですが、使用石材には溝が切られており、縄をかけた跡と見られるこの加工痕はきわめて珍しいため、クールトンもかつて言及していました。

ヘーニーやアーノルドといった、有名な学者たちも執筆しています。
G. ヘーニーは、"Tempel mit Umgang"という副題を持つ論文を書いており、これはもちろんボルヒャルトの名高い著作を意識したもの。ボルヒャルトに対する注釈と情報の更新という位置づけです。図版多数。
D. アーノルドは末期王朝以降の神殿における木製屋根の復原を述べています。彼自身がすでに出版している"The Temples of the Last Pharaohs" (1999)を補完する内容。これも復原図がたくさん作成されています。

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