2009年8月5日水曜日

Korres 1995


パルテノン神殿の石切場、有名なペンテリコンを舞台とした絵本。61枚に及ぶ詳細な図が何といっても素晴らしい。著者は建築家・修復家で、絵は全部、著者による手書きです。
最初はミュンヘンでの展覧会で図が発表され、そのカタログが

Manolis Korres,
Vom Penteli zum Parthenon
(München, 1992)

として出版された模様。
この図の部分を第1部とし、図の説明を第2部としています。

Manolis Korres,
From Pentelicon to the Parthenon:
The ancient quarries and the story of a half-worked column capital of the first marble Parthenon

(Publishing House "Melissa", Athens, 1995)
128 p., 61 drawings, 3 photographs.

Contents:
Prologue, p. 7
Part I
Narrative and Pictorial Reconstruction, p. 9
Part II
Explanation of the Plates, p. 61

Appendix 1
Testimonies, p. 116
Appendix 2
The Quarry of the Nymphs on Paros, p. 120

Contents of Parts I and II and their Correlation, p. 122
List of Figures, p. 123
Select Bibliography, p. 124
Indexes, Glossary, Greek pronunciation, etc., p. 127

ペンテリコンの石切場がどういう順番で開拓されていったか、どのような方法で石がひとつひとつ切り出されていったのか、使われた工具の話、ペンテリコンからアクロポリスの丘までの石の運搬経路、巻き上げ機の使用、アクロポリスの丘の上でのクレーンを用いた組積方法、仕上げの方法など、丁寧に解説されています。
こうした建造作業全体の把握は、たぶん古代ギリシア人たちにもできていなかったかも。そう思わせるほどうまく纏められており、特に第2部は秀逸。

石造建築のうちで、石がどこから切り出されたかが分かっている有名な建物はいくつかありますけれども、これほど詳しく説明がなされている例は稀。石切場そのものの調査が、どこの国でもあまり進んでいないという問題点もあります。
著者のさまざまな力量が結晶した傑作で、以降の石切り場の報告書にも大きな影響を与えています。

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