2009年8月7日金曜日

Vanhove 1996


エーゲ海に浮かぶギリシアのエウボエア島を舞台とする調査で、複数の石切場と、それらを結ぶ運搬路が対象。Bessacによるフランスの石切場の報告書と同じ1996年に出されています(Bessac 1996)。比較して見ると面白い。

Doris Vanhove,
with contributions by A. De Wulf, P. De Paepe and L. Moens,
Roman Marble Quarries in Southern Euboea and the Associated Road Systems.
Monumenta Graeca et Romana (MGR), VIII
(E. J. Brill, Leiden, 1996)
x, 53 p., 128 illustrations, 2 maps.

Contents:
Foreword, vii
Introduction, ix
1. Topographical Survey (A. De Wulf), p. 1
2. Archaeological Description (Doris Vanhove), p. 16
A. Styra: Haghios Nikolaos and Krio Nero, p. 16
B. Pyrgari, p. 22
C. Styra and Pyrgari: General Conclusions, p. 33
3. Oxygen and Carbon Isotopic Data and Petrology of Cipolino from Styra and Karystos (Euboea, Greece) and their Archaeological Significance (L. Moens, P. De Paepe & K. Vandeputte), p. 45
List of Figures, p. 51

Korresによるペンテリコンの石切場に関する報告書が参考文献に挙げられており(Korres 1995)、この本が石切場を報告する者たちに大きな影響を与えていることが分かります。図版が多めに収められているのも、Korresの本(画集)をお手本にしているから。

全体の分量は、さほど多くはありません。
第1章は島の山中で地形測量をしなければならなかったあらましと、測量方法、精度などを報告しています。巻末に折り込みとして挿入されている2枚の図面が測量作業の成果。テクニカルな測量作業の話を長く書くのは異例だと思われます。
第2章が考古学的記述の部分で、各々の石切場と運搬路を詳述。
第3章は科学分析の報告に充てられており、主に産出される大理石の分析。同じ島内であるにも関わらず、場所によって性質が異なることが指摘されています。

モノクロの写真は不鮮明なものが含まれ、惜しまれるところ。
主執筆者の手による図もたどたどしい部分があって、もう少し詳しい平面図を見たかった。未完成の円柱など、技法の説明は主として写真に頼っています。
チポリーノ大理石の主たる産出場所であった島の調査報告で、運搬路も重要視されている点が見どころ。

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