古代エジプトの石材加工について述べている本で、類書と大きく異なっているのは、著者が自分で工具を作り、実際に試して造ってみていることで、この姿勢が徹底しています。
在野の研究者による成果としては、すでにIsler 2001を挙げました。
Denys Allen Stocks,
Experiments in Egyptian Archaeology:
Stoneworking technology in Ancient Egypt
(Routledge, London, 2003)
xxxi, 263 p.
花崗岩を昔の方法で削ったりということを、労力を厭わずやっています。花崗岩を削る時には長い時間がかかり、その時には「つんとする臭いがする」なんて報告してありますが、こんなことは他の本で書いていません。
本人はもちろん大まじめで取り組んでいるわけですけれども、ユーモラスな印象が残るのは、一生懸命に古代のやり方で逐一、石を切ったり削ったり、また道具まで作っているからです。制作途中の、著者が写っている写真も面白い。1941年生まれだから、今年、68歳です。
幻の筒状ドリルも、復原して使ってみています。これは未だにどこからも発見されていない工具で、残存する加工痕より、かなり早くからこういう形状のものが用いられたであろうと、例えばピートリが19世紀末に論考を発表している代物。花崗岩製の棺の内部を刳り貫くためなどに使われたと考えられているものです。
ピラミッド内に残るクフの石棺については詳しい分析を試みており、この時代は柔らかい銅製の工具しかありませんから、この硬い花崗岩製の棺を加工する過程で、1日当たり1キログラムの銅が工具から磨り減ってなくなったであろう、などと詳細な計算もしています。
本を出しているラウトレッジは有名な出版社。エジプト学関連の多くの本も刊行しています。
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