ベッドは、機能としては人が横になって寝ることができる家具ですが、さまざまな形式があり、これらを広く紹介しているのがライトの本。
Lawrence Wright,
Warm and Snug, the History of the Bed
(Routledge & Kegan Paul, London, 1962)
邦訳:
ローレンス・ライト著、
別宮貞徳・三宅真砂子・片柳佐智子・八坂ありさ・庵地紀子訳、
「ベッドの文化史:
寝室・寝具の歴史から眠れぬ夜の過ごしかたまで」
(八坂書房、2002年)
527 p., xiv.
一番最初に「クレオパトラのベッド」と題した章が書かれており、古代エジプトの家具についての簡潔な紹介がなされています。一般読者を引き込む書き方は非常に巧く、ベス神にディズニーのキャラクターであるグーフィーを並置してみせたりしていて、全体が読みやすい。
スーダンのベッド('angarib、あるいはangareeb)との類似にも言及しているところはさすがです。この点はエジプト学者のJ. E. Quibellがとても古い報告書の中で指摘をおこなっており、現在ではあまり語られないところ。ベッドを通じて文化史を語っている書で、広範な内容が展開され、魅力的。
この英国人は「風呂トイレ賛歌」(晶文社、1989年)や「暖炉の文化史:火を手なずける知恵と工夫」(八坂書房、2003年)も書いています。建築にまつわる文化史を書くことに能力を発揮した著述家でした。
1983年に亡くなっていますので、近年、「倒壊する巨塔:アルカイダと『9/11』への道」(上下巻、白水社、2009年)がピュリツアー賞と「ニューヨーク・タイムズ」年間最優秀図書を受賞して注目を浴びているローレンス・ライトとは全くの別人。
ベッドを扱う本は多数あって、
Hubert Juin,
Le lit
(Hachette, Paris, 1980)
123 p.
は、古今東西のベッドが出てくる名画や図版を集めている本。244点の図版を掲載。「ハムレット」などの典籍からの引用もあり、楽しめますが、見ようによっては高尚なエロ本だとみなした方が分かりやすい。もちろん、そこが狙われているわけです。
世界的に高名な家具デザイナー・他が出版した「ベッド」という本もあり、
Ole Wanscher, Hans Bendix, Egill Snorrason, Jørgen Kaysøe, Knud Poulsen, Albert Meritz, Grete Jalk,
Sengen / The Bed / Das Bett / Le lit
(Mobilia, Snekkersten, 1969)
(89 p.)
出版社は知られた家具メーカー。デンマーク語・英語・ドイツ語・フランス語の4ヶ国語を併記しています。ページ番号を振っていない本なので、引用が難しいのが困る点です。
エジプト学者の中で、最も初期に古代の家具を体系的に研究しようとしたひとりはおそらく、Caroline Louise Ransom Williams(1872-1952)で、
Caroline Louise Ransom,
Studies in Ancient Furniture:
Couches and Beds of the Greeks, Etruscans and Romans
(University of Chicago Press, Chicago, 1905)
128 p., 29 plates.
がツタンカーメン王の墓が発見される前に出されています。この本は著者の博士論文で、指導教授はブレステッドでした。彼女についてはアメリカにおける最初の本格的な女性エジプト学者として、バーバラ・S. レスコが紹介文を書いており、"Caroline Louise Ransom Williams"で検索すればすぐに出てくるはず。
これまで出版された本のなかで、墓の壁画を詳細に報告している最良の例としては、
Caroline Ransom Williams,
The Decoration of the Tomb of Per-neb:
The Technique and the Color Conventions.
The Metropolitan Museum of Art, Department of Egyptian Art Publications, III
(MMA, New York, 1932)
ix, 99 p., 20 plates.
を屋形禎亮先生が挙げておられましたけれども、今日でも事情は変わらないようです。結婚して姓が変わっていますが、同一人物による著作です。これほど細かく報告している例は稀。
今では無償でダウンロードすることができます。
ペルネブの本は日本のどこの研究機関が所蔵しているのか、今、Webcat Plusで検索すると、東京国立博物館しか出てきません。でも昔、当方が最初にこの本に触れたのは国会図書館で、事実、まだ所蔵されている様子。
また現在では早稲田大学に入っていることも、早大図書館のデータベースを検索すれば了解されます。
Webcatは完全ではないし、情報が最新ではありません。あまり信用せずに、地道に探すことが大切かもしれません。検索では出てこないけど実際には国内に所蔵されていた、なあんていう例はけっこうあります。
Webcatは完全ではないし、情報が最新ではありません。あまり信用せずに、地道に探すことが大切かもしれません。検索では出てこないけど実際には国内に所蔵されていた、なあんていう例はけっこうあります。
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