ファルーク・ホスニによる序文つき。
Pierre Crozat,
Système constructif des pyramides
(Canevas, Frasne, 1997)
159 p., 1 tableau.
Table des matières:
Préface de Farouk Hosni, Ministre Égyptien de la Culture, p. 5
Introduction, p. 7
I L'état de la question, p. 15
A. Les théories mystiques, p. 16
B. Les théories pseudo-scientifiques, p. 21
C. Les théories constructivistes, p. 22
II Analyse critiques des théories constructivistes
A. Le système à rampes frontales, p. 25
B. Le système à rampes latérales ou enveloppantes, p. 36
C. Le système par accrétion et outils de levage, p. 40
III Esquisses d'une autre approche, p. 47
IV Notre raisonnement, p. 61
V Concept de construction, p. 83
VI Modélisation, p. 97
VII Rampe et Grande Galerie, p. 107
VIII Confrontation, p. 123
IX Hypothèse de l'exploitation de carrière, p. 137
X Conclusion, p. 147
XI Bibliographie sommaire, p. 151
Annexe: Tableau comparatif des assises de la Grande Pyramide, p. 153
J.-P. AdamやJ. Keriselの考え方も紹介しており、珍しい。前者は古代ローマ建築を専門とする建築家・考古学者、また後者は地盤工学を専門とする研究者で、ピラミッドについて何冊も本を書いている人。筆者のCrozatは建築家・都市計画家で、だからこういう論考にも目を向ける余裕があるわけです。
考え方は独特で、まずはギリシア語で書かれたヘロドトスの「歴史」の抜粋から始め、
"Ainsi fut construite cette pyramide: quelques-uns appellent ce mode de faire les 'krossaï' et les 'bomides', une telle appellation [bomides] au début, après qu'ils construisent, une telle autre [krossaï]. Les pierres suivantes furent soulevées grâce à des machines faites de morceaux de bois court, en les enlevant de dessus le sol [pour les mettre] sur la première rangée de degrés..." (p. 48)
と、"krossaï", "bomides"の区別から出発。
その後、数式がいくらか出てきますので、覚悟が必要。
例えば68ページでは、
η Ση
1 - 1 1
2 - 3 1+2
3 - 6 1+2+3
4 - 10 1+2+3+4
5 - 15 1+2+3+4+5
6 - 21 1+2+3+4+5+6
7 - 28 1+2+3+4+5+6+7
8 - 36 1+2+3+4+5+6+7+8
9 - 45 +9
10 - 55 +10
etc. etc.
という階段状に並べられた数式があらわれます。これで驚いてはいけません。積み木を用い、実際にピラミッドの構築を縮尺1/50でやって見せています。
黄金比φや円周率πについて否定するために、足し算だけでピラミッドのかたちを正しく復原して見せている、そういう印象が与えられます。基本的な事項から考えるということが徹底され、目眩がする本。否定のために費やされている労力が尋常ではありません。
黄金比φや円周率πをピラミッド論の内に持ち込むことにはいびつさが感じられるわけですが、その反論にも同様のいびつさが押し出されている例。
しかしこうした論の、おおもとのモティーフは重要で、検討に値します。
ほぼ正方形の版型の、グレーの表紙のペーパーバック。
巻末に収められた大きな折り込みの図は、イタリア隊のMaraglioglio & Rinaldiによる図に加筆を施したもの。
クフ王のピラミッド内における諸室、あるいは上昇通廊でうかがわれる、いわゆる「ガードルストーン」の配置に、根拠を与えようとした考察も面白い。
ピラミッドを巡っての、こういった論が数年ごとに出てくるというところが、欧米の思考力の凄さです。
おそらく、この本の中で最も批判されているのはJ.-Ph. ロエール。エジプト学では高名ですが、論理としてはたいした解釈を提示できず、誤謬ばかりを撒き散らした張本人、という見解になるかと思われます。