ただし、British Archaeological Reportsを略したBARというシリーズもあって、紛らわしい。
J. H. ブレステッド(1865-1935)はアメリカにおいてエジプト学を最初に手がけた偉大な人。エジプト語辞典であるA. Erman und H. Grapow (Hrsg.), Wörterbuch der ägyptischen Sprache (Akademie-Verlag, Berlin, 1926-1961), 12 Vols.の編纂に関わったり、エジプト語の文法書を出したりしたドイツのA. エルマンのもとで、初めて博士論文を執筆した米国人。
ブレステッドはシカゴ大学オリエント研究所(OIC)の創立当初、所長としてこの名高い組織を率いた人物でもありました。
James Henry Breasted,
Ancient Records of Egypt:
Historical Documents from the Earliest Times to the Persian Conquest, 5 Vols.
(University of Chicago Press, Chicago, 1906-1907)
Volume I: The First to the Seventeenth Dynasties (1906)
Volume II: The Eighteenth Dynasty (1906)
Volume III: The Nineteenth Dynasty (1906)
Volume IV: The Twentieth to the Twenty-sixth Dynasties (1906)
Volume V: Indices (1907)
エジプトの第1王朝から26王朝までの長い期間にわたる主な歴史資料を、注釈付きで英語に訳しています。1〜4巻を1906年に出し、最後の5巻目になる索引だけを翌年に刊行。
この本はシカゴ大学出版局で1923年、1927年と版を重ねた後、さらにロンドンの出版社、Histories & Mysteries of Man Ltd.から1988年に、またシカゴのUniversity of Illinois Pressから2001年にリプリントが出されています。100年近く読み継がれている、驚くべき本。ブレステッドが亡くなる前の1927年出版のものが決定版とされ、2001年に出たものにはP. A. Piccioneによって新たに紹介文や文献などが書き足されました。
1906年は、これもまた恐るべき刊行物、Kurt Sethe, Urkunden der 18. Dynastie(Urk. IV)がベルリンから出た年でもあります。
手分けをしているかのような出版。一方は全般の網羅を、他方では花の第18王朝に関する全部の歴史資料の集成を試みています。
ただUrkundenのシリーズもまた、全部を包括することをめざしており、一足早く開始して出版。
Urkundenのシリーズの一覧は、Michael Tilgnerが纏めています。
http://www.geocities.com/TimesSquare/Alley/4482/EEFUrk.html
ほとんどの巻のダウンロードが可能。
同じ時期、エジプト学に愛想を尽かしたイギリスのピートリは、この年に
W. M. Flinders Petrie,
with chapters by C. T. Currelly,
Researches in Sinai
(E. P. Dutton and Company, New York, 1906)
xxiii, 280 p.
W. M. Flinders Petrie,
with chapters by J. Garrow Duncan,
Hyksos and Israelite Cities.
Egyptian Research Account, Twelfth Year (ERA XII)
(Egypt Exploration Fund, London, 1906)
viii, 76 p., LI plates.
を刊行し、イスラエルへと調査の足場を移そうとした傾向が濃厚。
それぞれの学者が当時の最先端で見ている仕事の内容の違いが分かって面白い。