その後20年近く粘り強い考察を進めてきたようで、いわゆる「王妃の間」の下に、別の部屋があるのではないかという示唆をおこなっています。
Gilles Dormion,
La chambre de Chéops: Analyse architecturale.
Études d'Égyptologie 5
(Librairie Arthème Fayard, 2004)
311 p.
Table des matières:
Préface par Nicholas Grimal (p. 7)
chapitre I La construction des pyramides (p. 29)
chapitre II Les demeures d'éternité (p. 45)
chapitre III Les pyramides de Snéfrou (p. 54)
chapitre IV Le problème de la Grande Pyramide (p. 68)
chapitre V L'appartement souterrain (p. 76)
chapitre VI Le couloir ascendant (p. 87)
chapitre VII Le prolongement du puits (p. 106)
chapitre VIII Le couloir horizontal (p. 114)
chapitre IX La chambre dite
chapitre X La grande galerie (p. 156)
chapitre XI La chambre des herses (p. 183)
chapitre XII La chambre dite
chapitre XIII Le dilemme (p. 224)
chapitre XIV La chambre du second projet (p. 228)
chapitre XV La chambre de Chéops (p. 263)
chapitre XVI Synthèse (p. 270)
Plans (p. 274)
Les rois de la IVe dynastie et leurs pyramides (p. 300)
Bibliographie (p. 301)
Remerciements (p. 303)
Table des figures (p. 304)
前書に当たる2冊を、ここで掲げておかなくてはなりません。発端を語っているのが以下の2冊。
Gilles Dormion et Jean-Patrice Goidin,
Khéops: Nouvelle enquête;
Propositions préliminaires
(Éditions Recherche sur les Civilisations, Paris, 1986)
110 p., plan.
Gilles Dormion et Jean-Patrice Goidin,
Les nouveaux mystères de la Grande Pyramide
(Édition Albin Michel, Paris, 1987)
249 p.
「王妃の間」の床に、訳の分からない痕跡が多数あることは、すでに19世紀の終わりに詳細な調査をおこなったピートリの報告によって指摘されていました。
この建築家はその痕跡を克明に追い、また床に電磁探査をかけたりして、この部屋の下に想定される落とし戸のある通路や、その先に続くべき秘密の部屋の実像を突き止めようとしています。
非常に大胆なことを示していて面白い。
石材の目地の不規則さ、また石に残っているわずかな削り跡や穴の痕を、どのように解釈し、総体としてまとめ上げられるかが述べられていて、驚嘆します。
王の間に残る石棺の痕跡から、蓋の形状を復元し、この蓋が単に上から載せられる形式のものではなくて、石棺の長手方向の真横から溝に沿って辷り込ませるものであること、また3つのダボを用いて、いったん閉めると二度と開かなくなる仕組みについて、明快に図示しています(202ページ、図45)。この種の図解は最近、しばしば見られるようになりましたが、その先駆け。
巻末に収められた何枚ものピラミッドの詳細図は素晴らしい。初めて見る図面が少なくありません。観察眼が鋭く、良く細部を見ていることに感心させられます。
特に「王妃の間」の図面は、これまで刊行されたどの図面よりも詳細で、イタリア隊の図面、Maragioglio e Rinaldi 1963-1975の第4巻よりもはるかに詳しい。比べて見るならば、すぐに分かります。
彼の説がどれだけ受け入れられるかどうか、危うく思われるし、これを確かめるにはかなりの量の石を取り外さないといけないこともあり、その調査が実現できるかも難しいところ。
しかしクフ王のピラミッドの内部に、未知の部屋があるらしいことをこれだけ具体的に示した本は稀有です。
痕跡の解釈に関しては、恐るべき才覚を備えた人物であって、見習うべきところが多い。
本には前書き以外、註が一切、振られていません。参考文献もたったの2ページ。普通の研究者ならば、頭を傾げるところです。この欠点を上回るのが圧倒的な痕跡の解釈であって、後年、彼の説の全部ではないにしても、再評価されることを期待します。
序文をコレージュ・ド・フランスの教授、N. グリマルが書いています。フランスにおけるエジプト学の最高権威のひとり。