2008年12月14日日曜日

McKenzie 2007


20年に1冊出るか出ないかという意味合いを持つ、重要な本です。
およそ3000年にわたる古代エジプト建築の歴史に関する書籍はすでに何冊も出ており、またエジプトのイスラーム建築についても、たくさんの本が言及しています。都市アレクサンドリアを述べたものも多く出ている状況。
しかしこの出版物は、そのように分断された書かれ方の空白を埋めることを明確な目的としておそらくは著されたものであって、とても素晴らしい。
この本の登場によって、エジプト建築の5000年間にわたる歴史の通覧がはじめて可能になったとみなすことができるかもしれません。

Judith McKenzie,
The Architecture of Alexandria and Egypt, 300 BC - AD 700.
Pelican History of Art
(Yale University Press, New Heaven and London, 2007).
xx, 458 p.

本の題名の後半には"300 BC - AD 700"としか書かれていません。でも単なる年代を記しているだけに見えるこの記述は、事情を知る者にとっては、エジプトのプトレマイオス王朝からイスラーム時代直前までのビザンティン建築を扱った本であるという点がすぐに了解されます。

エジプトにおけるこの時期の約1000年間の建築について何故、今まで研究が遅れていたかと言えば、複数の異なる言葉や文化・宗教・美術などに知悉していなければならないという大きな制約があったからです。それが乗り越えられ、成果が達成されている書。
「話が込み入ってますし、分かりにくいでしょうから」と、冒頭で本の粗筋が紹介されているのは面白い点です。最も短い第13章では、建築の作図方法について触れられており、有用。

カラー図版も多く交え、もちろん既往研究の情報が緻密に網羅されています。
Pelican History of Artのシリーズに対しては、昔から高い評価が寄せられていました。数年前から判型を大きくし、またカラー写真を多数加える改変を経て、さらに評価は高まっているように思われます。
著者はペトラの建築についての報告書も出していることで有名。
書評がEgyptian Archaeology 34 (Spring 2009), p. 42に出ました。

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