2009年9月2日水曜日

Phillips 2002


古代エジプトの柱の類例を多数集めたもの。L. BorchardtやG. Foucartが100年ほど前に似たことをやっていますが、ここではもっと徹底的に収集がなされています。
図版が中心と言っていい本ですので、見やすい特徴を持っています。

J. Peter Phillips,
The Columns of Egypt
(Peartree Publishing, Manchester, 2002)
x, 358 p.

大まかには時代順に並べられており、多くは写真を用いて紹介されています。一方で図面が少ないことは、非常に惜しまれる点。
エジプト建築における柱のデザインの豊穣さが良く了解される本と言っていい。ですが、エジプト学の専門家ではないために、系統立って纏められているという印象は薄く、他の本との併読が必要かと思われます。

古代エジプトの柱についての建築学的研究は、欧米ではほとんど進められていないといっても過言ではありません。Petrieが大昔に、「寸法計画がまちまちであるように思われる」と表明した以降、進展していない状況にあります。カルナック大神殿の柱に関する組織的な分析が最近おこなわれ、注目されましたが、この遺跡は新王国時代以降が中心ですので、それより遡る時代に関しては触れていません。
本当はギリシア・ローマ時代のオーダーとの関連が探られてもいいはずなのですけれども。柱の太さに対する高さ、また柱のテーパーとセケドとの関係など、Petrieに倣い、さらに対象を拡張して広範に諸資料が集められるべきだと思います。

著者に関しては、"Senior position in Information Technology at the University of Manchester"を早期に退職して、この柱の研究に打ち込んだと書いてあります。IT出身の方ですね。少々、変わった人。
なお、序文をR. Janssenが書いています。

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