2009年3月6日金曜日

Cabrol 2000


アメンヘテプ3世について書かれた一般向けの一冊。この王について記した本は、アメリカとフランスでおこなわれた展覧会の成功以後、ずいぶんと増えてきました。
ペーパーバックですが、カラー写真も所収しており、図も比較的豊富です。メムノンの巨像の頭部分を上空から撮影した写真があって、もともとは王冠が載せられていたことを告げています。巻末には家系図、また「ライオン狩り」や「結婚記念」のスカラベのヒエログリフも転載。
アメンヘテプ3世に関わる遺物も50ページ近くにわたってリストアップされており、これはポーター&モスなどから抜き出して作られたものです。専門情報をやさしく伝えようとしていることが了解されます。

Agnes Cabrol,
Amenhotep III: Le magnifique
(Editions du Rocher, Monaco, 2000)
537 p.

ただ206ページの註98や巻末の参考文献リストには、

B. J. Kemp, The Excavations of Sites J, K, and P, EgyTod 2, III, 1978.

Concordian [sic], (Lilian), Malkata and the Birket Habu, The Painted Plaster from Site K, EgyTod 2, VI, 1978.

なるものが挙がっていますけれども、これらは予告だけ出され、実際には出版されていない報告書。
実際の本をろくに見もしないまま、確認を怠ってうかうかと引用すると言うことは当方もしばしばやる手なのですが、危険なことだと改めて思う次第。
数日前もEgyptologists' Electronic Forum (EEF)で、

Dieter Arnold,
Der Tempel des Königs Mentuhotep von Deir el-Bahari, Band 4:
Relieffragmente des Mentuhotep
(Mainz, 1993)

は本当に出版されているのかという問い合わせが書かれていました。これも幻の報告書のうちのひとつかと思われます。アーノルドが2003年に出しているThe Encyclopaedia of Ancient Egyptian ArchitectureArnold 2003)の"Mentuhotep, Temple of"の項目(pp. 149-150)には、

Der Tempel des Königs Mentuhotep von Deir el-Bahari, 3 vols. (Mainz 1974, 1974, 1981)

と示され、第4巻目の存在を、まず本人が記していません。
一方で、Theban Mapping Projectにおける"Bibliography for Dayr al Bahri"には第4巻が挙げてあり、こういう場合にはどちらを信じるか、ということだと感じられます。
他にもR. Stadelmannによる建築報告書など、予告だけされていて何年も経っているというものが存在します。

アメンヘテプ3世に関しては、

Elizabeth Riefstahl,
Thebes: In the Time of Amunhotep III.
The Centers of Civilization Series
(University of Oklahoma Press, Norman, 1964)
xi, 212 p.

が出ていて、これがかなり早い時期の刊行物となります。
フレッチャーによる入門書はドイツ語版もあるようですが、簡単な内容。

Joann Fletcher,
Egypt's Sun King:
Amenhotep III, An Intimate Chronicle of Ancient Egypt's Most Glorious Pharaoh
(Duncan Baird Publishers, London, 2000)
176 p.

Joann Fletcher,
Sonnenkoenig vom Nil, Amenophis III.
Die persoenliche Chronik eines Pharaos
(Droemer, Nuenchen, 2000)
176 p.

さらにはスペインで出版された別の本もあります。

Francisco J. Martin Valentin,
Amen-hotep III:
El esplendor de Egipto.
Coleccion: El legado de la historia, No. 1
(Alderaban Ediciones, Madrid, 1998)
366 p.

お気づきのように、「アメンヘテプ」の綴りが本によって異なっており、これを勘案しないとインターネットによる検索で情報をうまく把握することができません。
Amenhotep, Amunhotep, Amenophis, Amen-hotepとさまざまに記され、こういうところが厄介です。

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