城塞のような造りで、矩形平面の周壁を巡らせ、その中央に高い基壇が築かれて、その上に建物が立っていた模様。テル・エル=ダーバの王宮との類似点が挙げられ、注目されます。
彩画片もいくらか出土しています。
発掘を始めてからこの報告書が出るまでに、10年かかっています。遺跡の調査では、短い場合でもだいたいこのぐらいかかってしまうという例。
Peter Lacovara,
Deir el-Ballas:
Preliminary Report on the Deir el-Ballas Expedition, 1980-1986.
American Research Center in Egypt Reports, Vol. 12
(Eisenbrauns, Winona Lake, 1990)
x, 67 p., XVII plates, 5 folded plans.
この発掘調査の成果をもとにして、以下の博士論文が執筆されました。162ページから250ページまでは図版です。新王国時代に属する住居系の建物の平面図が集められていますから便利。
もちろんアマルナやマルカタも含まれていますし、それ以外にも小規模な住宅類の図が所収されています。E. Roikによるモノグラフといった少数を除き、こういう本はあまりありません。
Peter Lacovara,
State and Settlement:
Deir el-Ballas and the Development, Structure, and Function of the New Kingdom Royal City.
A Dissertation submitted to the Faculty of the Division of the Humanities in Candidacy for the degree of Doctor of Philosophy.
Department of Near Eastern Languages and Civilizations, University of Chicago
(Chicago, 1993)
xiii, 275 p.
この博士論文の内容がほとんどそのままのかたちでロンドンのKPI社から本が刊行されました。"Studies in Egyptology"のうちの一冊です。
題名も改められましたが、しかしこのタイトルであったなら、本当はもうちょっと数多くの遺構を取り扱わなければなりません。このため、「扱う範囲が狭い」というような辛口の書評が確か、寄せられていたように記憶しています。
Peter Lacovara,
The New Kingdom Royal City.
Studies in Egyptology
(Kegan Paul International, London, 1997)
xiv, 202 p.
この後に王宮建築に関する本がいくつも出されていますから、重要性がいくらか薄らいだとも思えますが、しかし古代エジプトの王宮を知ろうとする場合にはやはり、基本的な著作のひとつに数えられます。
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