2009年3月14日土曜日

Rivers and Umney 2003


家具の修復に関する手引き書。
家具では木材の他に、皮革や布・紐・金属・貝・骨・象牙・石など、多様な材料が組み合わされる場合が少なくありません。
さらには塗装や彩画が施され、複雑さの度が格段に増します。ここに家具の特殊性があり、面白さが感じられるところです。

いくつかの家具には、動きも加えられます。移動のための車輪、開閉できる扉、収納のための引き出し、家具自体の折りたたみ機構など。
複雑に組み合わされた機械とよく似た面を、家具というものは持っていて、多くの建築家が家具の設計に惹きつけられるのは、たぶんそうした魅力を備えているからだと思われます。

家具という存在はまた、建築の延長上に考えることができ、座ったり、寝そべったり、人間が日常でじかに接触する特別な建築の部位としての意味も持っています。構造的な強度を考えなければならない他に、素材の暖かさや柔らかさも勘案しなければなりません。

Shayne Rivers and Nick Umney,
Conservation of Furniture.
Butterworth-Heinemann Series in Conservation and Museology
(Elsevier, Butterworth-Heinemann, Oxford, 2003)
xxxiii, 803 pp.

800ページを超える大著で、木を巡る章では経年変化に伴う収縮率、構造力学の公式、使用する有機物の化学式など、ページをめくる度に、現在の復原修復作業に関わってくる必要な事項が次々とあらわれ出てきます。
数学と化学の基礎知識が、今日の保存修復においては必要であることを改めて痛感する本。

153ページ以降、あるいは753ページ以降では、

「日本すること」(Japanning)、
「日本された家具」(Japanned furniture),

なんていう書き方をしている箇所もありました。
これは「漆塗り」のことで、堅牢な塗膜を形成するこの技法が、世界に広くすでに知られていることを示しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿