パンテオンについてこれほど詳しい本が出たのは、おそらく最初です。
著者はチャールストン大学のアーキヴィスト。史料の収集に関してはプロです。
ただM. ウィルソン・ジョーンズへの謝辞があり、建物の痕跡をどう解釈するかについては彼の助言が相当大きかったことが示唆されます。建築家であり、建築史家でもあるウィルソン・ジョーンズの主著、Principles of Roman Architecture (New Haven, 2000)の最後のふたつの章はパンテオンの謎について記されたものですから、その決着がどのように書かれるのかが、注目されるひとつの点。
Gene Waddell,
Creating the Pantheon:
Design, Materials, and Construction.
Bibliotheca Archaeologica, 42
(L'Erma di Bretschneider, Roma, 2008)
428 p. including 240 illustrations.
ISBN 978-88-8265-493-1
Contents:
Part I: Introduction
1. Preliminary Considerations
2. Major Advances in Knowledge
Part II: Roman Design and Construction
3. Standard Design Procedures
4. Concrete Construction
5. General Sources of Design
6. Specific Sources of Design and Construction
Part III: Preliminary Design Phase
7. The Site
8. Structural Design
Part IV: Concrete Construction
9. Lower Drum and Block
10. Upper Drum and Block
11. Dome
Part V: Embellishment
12. Comparisons of the Orders
13. The Porticoes
14. Finishing
Conclusions
ローマのパンテオンは、最も有名な観光の名所のうちのひとつですが、列柱玄関部(ポルティコ)の不自然さについてはかなり昔から討議されていました。何故こんなに不格好なのかということが長年、建築の関係者の間では話題となっていたわけです。
歴史上の有名な建物は、すべて完璧にまで美しい作品だから広く世に知られているのだろうと考えると、大きく間違えます。パンテオンはその典型で、建物全体から見るとひどく見劣りがする列柱玄関は、最初はなかったのではないかとも考えられたりしました。
この本では、もっと高い列柱玄関が計画されたのであろうが、基礎への負担を軽減するため、低く抑えられたのではないかと結論しています。
建築の報告書として読むことを考えるならば、あまりにも淡々として語られ過ぎているという印象が与えられ、新たに作成された説明図が見たかったという思いが残ります。テキストと図版をすっぱりと分け、文中には一切、図や写真がないのも特徴。建築家がもしこの本を纏めるとしたら、どのように異なったかを想像するのも面白い。
イタリアで出版された本であるため、多少入手しにくい側面があります。Amazonなどでは検索で出てこないかもしれないところが問題点です。
パンテオンに関する近刊の書が序文にて予告されており、こういう知らせも貴重。
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