特に南アジア建築の技法を述べた本はきわめて稀で、注目されます。
概説を広く記すことに心が砕かれたようです。
Jacques Dumarcay, translated by Barbara Silverstone and Raphaelle Dedourge,
Construction Techniques in South and Southeast Asia: A History.
Handbook of Oriental Studies, Section 3: Southeast Asia, vol. 15
(Brill, Leiden, 2005)
vii, 108 p., 100 figs.
本文は100ページほどしかなく,あとはモノクロの図版ですが,木,土,石など、この地域で用いられた建築素材を網羅しています。多種多様にわたる建築の形式をまとめることができたのも、この人ならではの仕事。厚い書籍ではありませんが、初めて見る図版がいくつか加えられています。石だけを重視するという立場を取っていません。
「建築の技術では建物を空中へ実際に浮かせることはできないけれども、アンコール・ワットやペナタランのように、ガルーダに支えられて浮かんでいる強烈なイメージの実現こそが建築なのだ」というようなことが結論の最後には書かれており,そこに彼の深い建築観が看取されます。
この20年ほどの間で、建造技法について記した本は矢継ぎ早に出版されており、そろそろ比較がおこなわれても良い時期です。
この同じシリーズで、デュマルセはクメール建築史を書いています。
Jacques Dumarcay and Pascal Royere, translated and edited by Michael Smithies,
Cambodian Architecture, Eighth to Thirteenth Centuries.
Handbook of Oriental Studies, Section 3: Southeast Asia, vol. 12
(Brill, Leiden, 2001)
xxx, 274 p., 148 figs.
こちらも重要。
出版社のブリルはヨーロッパにおける老舗で,このHandbook of Oriental Studiesのシリーズには,他にも見るべきものが多く含まれています。
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