2009年3月19日木曜日

Packer 1997


福岡キャンパス図書館の書架に並んでいるのを見て思い出した本。記憶に頼って書くという無謀なことをやりますが。
書誌は以下の通り。

James E. Packer,
The Forum of Trajan in Rome:
A Study of the Monuments, 3 Vols.
California Studies in the History of Art, 31.
Vol. I: Text.
Vol. II: Plates.
Vol. III: Portfolio.
(University of California Press, Berkeley and Los angeles, 1997)
xxx, 498 p. + xiv, 114 plates, 11 sheets of microfiche + iv, 34 folios.

ローマの中枢にある、トラヤヌス帝のフォルムに関する報告書。
フォルムというラテン語は要するに「広場」を指し示しており、日本語でも現在では「フォーラム」という表現で伝わっている言葉。

細長い広場の報告書が、何故500ページ以上も費やされて記されているかということを改めて考えると不思議です。建築を丁寧に報告すると、このような形態になると言うことが良く分かって参考になる本。

使用石材があちこちに散らばっていて、博物館に収蔵されたりもしており、これらを追う地道な作業が強いられます。ローマ時代には有名な建物がラテン語でも記録に残されるわけで、その文章表現もまた、重要な資料のうちに含まれます。
オーダーがあるので、柱の径などの情報をもとにして柱全体の復原も不可能ではない。このため、石材一点一点の扱いが重視されることになります。古代エジプト建築の報告と大きく異なるところです。

でも、対象はあくまでも広場です。そこに並べられた列柱が広場の格を高めるための役割を帯びることとなりますが、それももう全部が揃っていません。テキストを含む断片的な情報を集大成し、ばらばらになった建材にも注目し、また広場の設計方法を探り、という過程を踏んでの論考。
建築の報告書というものが、いかなる存在であるかを知るには最適の例かもしれません。

3巻の構成で、マイクロフィッシュが付いています。見るための専用の機械が必要。あるいは紙焼きにしてもらうこともできますが、高くつきます。
建築を本に仕立てると言うことの意味を考えるに当たって、いろいろなことを考えさせる重厚な書籍です。これほどの厚い本は珍しい。

ローマの中枢である場所を散策することはお勧め。現在、この周辺に車が進入することは禁じられています。考古学者にしてみれば、立ち入り禁止の領域をもっと広げておきたいところなのですが、それでは観光産業が成り立たなくなります。
観光客をどこまで入れるのか。また、遺跡をどう見せるのか。外国へ行った時に、観光客という立場を離れ、企画者の側の観点に立って遺跡を見るということも、是非試してもらいたい見学方法です。

0 件のコメント:

コメントを投稿