ただし、古代エジプトの例に適用しようとした試みは、私見ではあまり見当たらないようですが。
Bill Hillier and Julienne Hanson,
The Social Logic of Space
(Cambridge University Press, Cambridge, 1984)
xiii, 281 p.
Contents:
Introduction
1 The problem of space
2 The logic of space
3 The analysis of settlement layouts
4 Buildings and their genotypes
5 The elementary building and its transformations
6 The spatial logic of arrangements
7 The spatial logic of encounters: a computer-aided thought experiment
8 Societies as spatial systems
Postscript
非常に意欲的な内容を有する本で、たとえば序文には、
"The aim of this book is to reverse the assumption that knowledge must first be created in the academic disciplines before being used in the applied ones, by using architecture as a basis for building a new theory - and a new approach to theory - of the society-space relation. (.....)
The aim of
と記されています。
広範な領域を扱おうとするにも関わらず、その論の前提は比較的簡単で、建物の部屋をただの○であらわし、部屋と部屋との繋がりは線で結ぶことで表現する、ということに基本は尽きるように思われます。
でも、部屋の大きさも、方角も、窓の有無も、床の高低差も、室内に立つ柱の本数も、天井高さも、その他の建築表現にまつわる一切を完全に無視するというこの考え方は、きわめて近代的な思考方法を前提の了解としており、現代が獲得した建築に対する考え方を先鋭化した結果であるという点がまず認識されていなければなりません。
それらは要するに、些細な「飾り」なのだという物言いがなされていることに建築家は気づくべき。
その上で、著者たちは「空間の深さ」という大胆な概念を抽出します。その重要性は強調されるべきです。ここで初めて上述の"society-space relation"が問われるという構成です。
従って、「この論をそのまま古代の遺構に当てはめることができない」といった論点はまったくの見当外れで、ヒリアーたちの意図を充分汲んでいるとは思われません。
何人かの考古学者たちがこうした批判をおこなっていますけれども、そんなことは当たり前。むしろ、そのような考え方によって何が掬い上げることが不可能なのかが問題とされるべきであり、現代の建築と古代の建築との差異が、ここではっきりと明らかにされる可能性があります。
"For example, the 'pattern language' of Christopher Alexander and his colleagues at Berkeley, while appearing at first to be close to our notion of fundamental syntactic generators, is in fact quite remote, in intention as well as in his intrinstic nature." (p. xi)
と記していることは注目されます。「パターン・ランゲージ」の著者のC. アレクサンダーへの批判です。
冒頭の註では人類学者クロード・レヴィ=ストロースや社会学者ピエール・ブルデューの著作などが並びます。ふたりともコレージュ・ド・フランスの教授で、フランスを代表する知性。
考古学における、さらなる展開への突破口を示唆する書。ヒリアーは「空間は機械である」という著作も後に書いています。
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