2009年12月13日日曜日

Coulton 1977 (Japanese ed. 1991)


古代ギリシア建築の碩学クールトンによる名著。
20世紀初頭まで、建築の計画方法の分析と言えば、平面図や立面図の上に補助線をたくさん描いて、正方形や円(円周率πとの関連の模索)、簡単な比例値の長方形、ファイ(φ:黄金分割比・黄金律。1:1.618)などとの整合を見つけ出すというのが多くの方法でした。
それをひっくり返したのがこの本です。建築の設計というのは、一般の人が思っているよりももっと大ざっぱな部分があって、完璧な美のかたちがもともとあるわけではなく、曖昧模糊とした発想からどんどん手直しを重ねていく試行錯誤があるんだ、という実際の建造方法を理論の前提にしています。
専門家による和訳も出ています。

J. J. Coulton,
Ancient Greek Architects at Work:
Problems of Structure and Design

(Cornell University Press, Ithaca, 1977)
196 p.

邦訳:
J. J. クールトン著、伊藤重剛
「古代ギリシアの建築家:設計と構造の技術」
(中央公論美術出版、1991年)
318 p.

古代エジプト建築研究は、まだこの水準まで行っていません。この書が今なお取り上げられるべきなのは、そこに問題があるからです。
建造の経験を充分に積んでいくと、立てる前から建築の建ち上がった際の上方における細かな部分の不具合が予想できるようになり、それを建造前の段階から調整できるようになります。
つまり、柱の上にある部材の間隔を均等に揃えるために、柱の位置を最初からずらして計画するということをおこなうわけで、これは日本建築でも見られる方法。
古代エジプト建築の面白いところは、造りながら修正をおこなう場合がある点で、これは膨大な数の労働者が使えたから初めて可能な方法でした。
極端な例では、造りかけのピラミッドの位置を設計変更でずらすという場合も見受けられます。現代でこういうことをやると、建築家は業界で命を失います。

参考文献リストは、古典文献と近代の研究者による文献とが分けてあります。古典古代を研究する文献学者は、こういうふうに大別するのが普通。ただそれが他領域の研究者にまで浸透していない傾向があります。

専門用語の解説も図入りで付されていますが、必要最小限にとどめられており、ちょっと分かりにくいかもしれない。
例えばグッタエは項目で短く説明されていますが、図版では具体的に示されておらず、迷うかも知れません。

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