2010年1月4日月曜日

Aufrère, Golvin et Goyon 1994-1997


「復原されたエジプト」というタイトルを持つ3巻本。多数の図版を収めており、きわめて有用。フランスの研究者たちが、非常にたくさんのエジプトの建築遺構に関し、復原された姿を提示しています。この本を際立たせているのは、多数掲載されているカラーの水彩画。ゴルヴァンによる作品です。
第1巻は上エジプトを、第2巻はカルガ、ダクラ、バハリア、シーワなどの砂漠のオアシスを、第3巻は中・下エジプトを扱っています。

Sydney Aufrère, Jean-Claude Golvin, Jean-Claude Goyon,
L'Égypte restituée, 3 vols.
(Editions Errance, Paris, 1994-1997)

Tome I: Sites et temples de Haute Égypte.
De l'apogée de la civilisation pharaonique à l'époque gréco-romaine
(Paris, 1ère éd. 1994; 2e éd. 1997), 270 p.

Tome 2: Sites et temples des déserts.
De la naissance de la civilisation pharaonique à l'époque gréco-romaine
(Paris, 1994), 278 p.

Tome 3: Sites, temples et pyramides de Moyenne et Basse Égypte.
De la naissance de la civilisation pharaonique à l'époque gréco-romaine
(Paris, 1997), 363 p.

ゴルヴァンはチュニジアのカルタゴや、リビアのレプティス・マグナなどの復原図も精力的に描いており、絵の達者な研究者。第1巻のみが版を重ねているのは、この巻が人気の高い観光地であるルクソールを含んでいるからだと思われます。
カルナック神殿については延々と詳しくその増築過程を説明しており、複雑な構成を見せるこの建物の変遷を見やすく提示。
カルナック神殿に関しては、

Jean-Claude Golvin et Jean-Claude Goyon,
Les bâtisseurs de Karnak
(CNRS, Paris, 1987)
141 p.

が重要。同じ著者たちがもっと詳細に解説していて、この本のドイツ語版もすでに出版されています。
上エジプトとは風景が異なって、ナイル川がいくつもの支流に分かれるために土地が島状に点在する下エジプトの様子を、例えばアヴァリスの復原図はうまく伝えています。

建物の復原図を描く場合に問題となるのは、複数の復原案がある時にどうするのかということですが、ここでは取捨選択がおこなわれており、案を並列させるということをしていません。
ディール・アル=バフリーのメンチュヘテプ2世の記念神殿の場合はアーノルドの復原案が採用されており、ピラミッドを上に載せたウィンロックの案、あるいは人工的に造られた丘に木を生やしたシュタデルマンの案は不採用。

アスワーンやアレキサンドリアなどに触れられていないのは残念なところ。しかし綺麗な復原図の魅力が3巻にわたって生かされており、ポスターとして復原図が別売りされている理由も良く分かります。

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