2010年1月15日金曜日

Loubes 1984


奇妙な題名の本ですが、「穴居住宅」というほどの意味の造語。地面を掘ってその中に住むというのは現在の日本ではなかなか考え難いことですけれども、ヨーロッパでは今でもそうした住居に住んでいる地域があります。イタリアの世界遺産、マテーラの洞窟住居はその典型。隣の中国でも見られます。もちろん日本でも、竪穴式住居が一般的な時代が続きました。

Jean-Paul Loubes,
Archi troglo.
(Parentheses, Roquevaire, 1984)
124 p.

Chapitre I: Fiction en architecture souterraine: de la realite a l'image
Chapitre II: Origines de l'architecture enterree
Chapitre III: architecture animale et troglodytisme
Chapitre IV: Typologie des formes troglodytiques
Chapitre V: L'Habitat troglodytique dans la peninsule iberique
Chapitre VI: Les troglodytes en Tunisie
Chapitre VII: Urbanisme troglodytique en Cappadoce
Chapitre VIII: L'habitat troglodytique en Chine
Chapitre IX: Urbanisme et troglodytisme: typologie des groupements
Chapitre X: Les espaces de l'architecture troglodytique
Chapitre XI: Illustrations
Annexe: Les parametres du climat souterrain

"Troglodyte"という単語が目次の各所に見受けられますが、ギリシア語に由来する「洞窟に住む人」のこと。近年、地球環境の変化が原因だと言われる異常気象の熱波や寒波で、ヨーロッパではたくさんの人が亡くなっています。穴居住居はそれ故、環境に優しい伝統的な住居として見直されつつあり、真面目に研究が進められています。
問題は上下水道や電気など、各種のエネルギーの供給で、それさえ解決すれば、室内が気候に左右されにくい穴居住宅は有利に働くという考え方。最後の付章では気候と室内環境を比較する分析をおこなっています。

第3章で、動物の巣を扱っているのは面白い。巣を「建築」と呼んでいます。地中に営巣する昆虫の活動に光を当てており、その合理性を強調しています。著者の姿勢がうかがわれるところです。
第5章はイベリア半島、すなわちポルトガルとスペインの住居を扱い、第6章はチュニジアのベルベル人たちの家、第7章ではお馴染みのカッパドキアの住居、第8章では中国の穴居住宅が登場します。

この著者は4年後に、中国の穴居住宅に注目した別の本を書いており、併読が望まれるところ。

Jean-Paul Loubes, preface de Pierre Clement,
Maisons creusees du fleuve jaune:
L'architecture troglodytique en Chine

(Creaphis, Paris, 1988)
140 p.

いずれも図版が多数含まれ、特に地下に掘り込んだ複雑なかたちを呈する不定形な平面図と断面図とが楽しめます。

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