2010年1月10日日曜日

Protzen 1993


インカ建築の技法書として、真っ先に挙げられる本。エジプトやミケーネなどの石造の例と適宜比較しながら、建造技術を丁寧に解説しています。
人間が石で建物を造る時、その扱いが時期や地域を問わず、半ば普遍的であったことが良く了解されます。
近年、スペイン語訳が出ました。

Jean-Pierre Protzen,
with original drawings by Robert Batson,
Inca Architecture and Construction at Ollantaytambo
(Oxford University Press, New York, 1993)
x, 303 p.

Contents:
Introduction (p. 3)
I The Site and Its Architecture
1. The Archaeological Complex of Ollantaytambo (p. 17)
2. The Settlement (p. 41)
3. The Fortress (p. 73)
4. The Callejón and Q'ellu Raqay (p. 95)
5. The Storehouses (p. 111)
6. The Quarries of Kachiqhata (p. 137)

II Construction Techniques
7. Construction Materials (p. 157)
8. Qarrying (p. 165)
9. Transporting (p. 175)
10. Cutting and Dressing (p. 185)
11. Fitting, Laying, and Handling (p. 191)
12. Mortared Masonry (p. 211)
13. Details of Design and Construction (p. 219)

III Construction Episodes
14. Evidence of Construction Phases (p. 241)
15. Chronology (p. 257)

Conclusion (p. 271)
Appendix: Storage Capacity of Qollqa at Ollantaytambo (p. 289)
Bibliography (p. 291)
Index (p. 297)

この本の魅力を言うならば、何といっても多数掲載されている図版で、石組みの様子が写真や図面で豊富に紹介されている点が見どころです。
石切場、運搬方法などから、巨石を並べた壁体の組み方、隙間に挿入された細長い石の帯、運搬に用いられた突起、石と石とを固定するために加えられたクランプなど、話題は多岐にわたっており、さらに石の転用、増改築の痕跡などについても言及されています。

古典古代建築を見慣れた人にはあっと驚くような石組みの詳細が披瀝されており、興味が尽きません。
つまりはそれまでの知識を攪乱されているような感じがあるわけで、奇妙なことをやっている、という印象を強く覚えます。エジプトと似た加工技術もいくらか見られますが、加工痕のありさまは全く違っています。

冒頭に置かれた章で語られる、古代ローマ帝国とインカ帝国との比較も面白かった。基本的な構成は一緒なのだが、実際はまるで異なっているという名状しがたい感覚。
いくらでも別の世界はあり得るんだ、ということを改めて知らされる本です。

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