2010年1月3日日曜日

Naumann 1971 (2nd ed.)


小アジア、つまり現在のトルコ地域の建築を扱ったもので、内容は500ページを超え、図版も600点余りを収めます。著者はインスタンブールのドイツ考古学研究所の所長だった人。

Rudolf Naumann,
Architektur Kleinasiens von ihren Anfaengen bis zum Ende der hethitischen Zeit
(Verlag Ernst Wasmuth, Tübingen, 1971. 1. Auflage 1955, xi, 439 p., 491 Abbildungen)
xiii, 508 p. mit 615 Abbildungen, 2 Falttafeln.

本の題名は「小アジア建築、その始まりからヒッタイト時代の終わりまで」。数千年間に及ぶ建築の歴史が述べられます。
ヒッタイト帝国の首都であったハットゥシャ=ボアズキョイを自分で発掘調査をおこない、報告書まで出版している人の本なので、非常に詳しいのが特徴。類似する書籍は未だ出ていないはずです。
初版から第2版に至り、図版が100点以上追加されました。

ヒッタイトと言えば鉄ですが、この帝国が一番最初に鉄を自由に加工することを始めました。この国が衰えると、密かに隠されていた鉄の製法は世界に拡がっていきます。すなわちヒッタイトが滅びる紀元前12世紀というのは、人類史において非常に大きな意味を持ち、古代史では青銅器時代の終焉と鉄器時代の始まりを告げる画期的な時代をなすものですから、紀元前12世紀前とその後とに大きく2分して語られることがあるぐらいです。
ちなみに古代エジプトではラメセス時代に相当し、この国は田舎でしたから鉄が入ってくる時期が遅れました。王朝時代には鉄の製法が伝わっていないと見るのが通説です。

最初にトルコの地理や気候などに触れているのは、フェルナン・ブローデルの「フェリペニ世の時代における地中海と地中海世界」(1949年)を意識しているのかもしれません。次には建築材料として石や木、土、アスファルト、石灰などが紹介されます。
続いて建物の構造に話を移し、基礎から石積み、煉瓦積み、木材との混構造、柱、天井、窓や扉、階段、また水に関わる設備など事細かに類例を挙げていき、住居、城塞、塔、王宮、神殿などに話が及びます。

第2版は入手困難になりつつあります。
1970年の著者の60歳を祝う本も出ているようですが、未見。

Rudolf Naumann zum 60. Geburtstag am 18. 7. 1970.
Istanbuler Mitteilungen, Band 19/20.
368 p., 97 Zeichnungen, 78 Tafeln mit 233 Abbildungen.

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