2010年1月20日水曜日

Wilkinson 1983


メトロポリタン美術館のエジプト部門には模写を集めた部屋があって、天井の高い広間の壁面にぎっしりと壁画の写しが展示されています。
「ファクシミリ」は模写のこと。絵の具を使い、壁画を実物通りに描くことを意味します。透明フイルムを壁画の上にかけて、油性マジックで輪郭をなぞる作業は「トレーシング」、また凸凹のある浮彫の上に紙を乗せて刷り取る拓本を作成する方は、「スキージ」と言ったりするようです。

ここでは特に、カラー写真がまだなかった時代に盛んに制作された壁画の模写を集めています。ハワード・カーターも、ツタンカーメンの墓を見つける前には、こうした模写を手がけていたことがありました。メトロポリタン美術館長であったトマス・ホーヴィングのベスト・セラー「ツタンカーメン秘話」にも出てきますので、御存知の方も多いのでは。
ここで文章を執筆しているウィルキンソンは、20世紀の初めに模写を担当した人。

Charles Kyrle Wilkinson (text),
compiled by Marsha Hill,
Egyptian Wall Paintings:
The Metropolitan Museum of Art's Collection of Facsimiles

(The Metropolitan Museum, New York, 1983)
165 p.

(Contents:)

Foreword (p. 7)
by Christine Lilyquist
Egyptian Wall Paintings: The Metropolitan Museum's Collection of Facsimiles (p. 8)
by Charles K. Wilkinson
Catalogue of the Facsimiles (p. 65)

Index of Theban Tomb Owners (p. 163)
Index of Theban Tomb Numbers (p. 164)
Index of Monuments Other Than Theban Tombs (p. 165)

全部、カラー写真で紹介したかったのでしょうが、途中からはモノクロのカタログとなります。しかし、貴重な壁画も含まれていて、たとえばこの本でしか紹介されていないマルカタ王宮の壁画の模写などが見られます。
壁画の複写で高名なものは、ニーナ・デーヴィスの本。
エジプト学者である旦那の仕事の手伝いをしているうちに、その模写の仕事がいつの間にかうまくなって、しまいには3巻からなる大型本を碩学A. H. ガーディナーとともに出版しました。Davies and Gardiner 1936として紹介済み。

テーベの墓に関する豪華な報告書と言うことであれば、メトロポリタン美術館から出版された大判のタイトゥス・シリーズが挙げられます。これもまた見ておいて損がない本。

Norman de Garis Davies,
The Metropolitan Museum of Art, Robb de Peyster Tytus Memorial Series
(New York, 1917-1927)

Vol. I: The Tomb of Nakht at Thebes
(1917)

Vols. II-III: The Tomb of Puyemrê at Thebes
(1922-1923)

Vol. IV: The Tomb of Two Sculptors at Thebes
(1925)

Vol. V: Two Ramesside Tombs at Thebes
(1927)

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