レヴァントと呼ばれる東地中海岸地域は、古くから交通の要衝で良い場所であったため、諸民族が取り合いを長年続けています。「岩」という名を持つこのペトラも、その名残を伝える遺跡のひとつ。当方が持っているのは再版。
Judith McKenzie,
The Architecture of Petra.
British Academy Monographs in Archaeology, No. 1
(Reprint. Oxbow Books, Oxford, 2005.
Originally published by Oxford University Press,
Oxford, and in the United States by Oxford University
Press, New York, 1990, reprint 1995.)
xxii, 209 p., 245 plates, 9 maps
数多くの遺跡の図面と写真が収められています。と言っても高い懸崖に造立されたものがたくさんあるので、実測はほとんど不可能の状態。そのため、主なものはセオドライトによる簡単な測量と写真撮影から立面図を起こしています。
この点は妥当な判断と言うべきで、そうでなかったらいつまで経っても終わらない調査になっていたはず。
今だったら3Dスキャンという手があるけれども、これだって高価な精密機械を砂漠地帯へ持ち込む作業となり、面倒な問題がいくつも発生します。
成果を逆に考え、安価で簡単な作業の方法を後で決めていったふしが見られます。
墓の形式は比較的簡単で、単室の周囲に小部屋を配する形式が少なくないから、実測作業もそれほど大変ではなかったはず。
この報告書に厚みをもたらしているのは考察の部分で、アレキサンダー大王死後のヘレニズム文化を代表する遺構群であるために、エジプトのアレクサンドリアに残る建築との比較などをおこなっています。
ペトラの建築のファサードをタイプ別に分け、それぞれを図示している点も周到で注目されます。用語集として建築装飾を図入りで説明する丁寧さも見受けられます。
報告書はこうやって作るんだという、お手本のような本。
不満があるとしたら、徹頭徹尾、美術史学的な記録が図られた書だという点です。建築学的には、まだ記述すべき部分がありそうです。
なお、Oxbow Booksは中近東における考古学関連の書籍を扱う非常に有名な本屋さんで、研究者の多くが利用しています。
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