本のタイトルは、演劇界で大ヒットしてその後に映画化もなされた作品「ヴァージニア・ウルフなんか怖くない」を踏襲しています。Edward Albeeの記した文が冒頭に引用されているのはそのためです。
Willemina Wendrich,
Who is Afraid of Basketry: A Guide to Recording Basketry and Cordage for Archaeologists and Ethnographers.
CNWS Publications No. 6
(Centre for Non-Western Studies, Leiden, 1991)
vi, 156 p.
著者はベレニケにおける発掘調査の隊長を務めたことでも知られています。
オランダのレイデンにあるCNWSは面白い本を出すところで、この「非西洋研究センター」という奇妙な名前の付け方も興味深く思われます。大航海時代にアジアにまで進出し、オランダがいっぱい植民地を有していた時のなごりで、インドネシア研究などもここでおこなわれています。
序文で、1986年にバスケトリーの研究を始めたと書いており、5年でこのようなガイドブックを纏め、出版したことになります。どこでも籠細工が目に入ったとたんに釘付けとなり、その詳細を探ることに熱中したとありますから、相当熱心に勉強を重ねたに違いありません。
「友達の家や気安いレストラン、農業博物館を訪れた時はいつでも」、籠製品を目で探していたと序文で書いています。かなりの変人としか言いようがない。
表紙の絵が斬新で、植物繊維によるさまざまな編み方が全部一緒くたにされて提示されています。こういうところは、著者の独壇場。
籠製品の調査に必要な道具の解説から始まり、どこをどう計測し、記録すればいいのかを延々と語っているのが可笑しい。素人にとっては、綱が右巻きであろうが左巻きであろうが、たいしたことではないと思われるのですが、著者は真剣です。一本の綱の記録方法として、zS2{Z}3、なんていう表記がうかがわれ、これは逆時計回りに撚って作った紐を2本、今度は時計回りに撚って太い紐を作り、それをさらに3本合わせて逆時計回りに撚った一本の綱の様子をあらわしたもの。
丁寧に書かれた図版は豊富で、高い図化能力が素晴らしい。立体物の把握に長けた人であることが了解されます。
籐を編む趣味を持つ人たちにとっては、おそらく必携の書です。専門用語解説も巻末に付されており、最後の6ページ分は入念に作成された調査シートで、そこに挙げられた項目を埋めていけば、籠製品の記録としては望ましいことになるようです。
この人はアマルナから出土した縄や籠細工の仮報告も執筆していますし、後年、さらに本格的な本も出しています。
Willemina Wendrich,
The World According to Basketry: An Ethno-Archaeological Interpretation of Basketry Production in Egypt
(CNWS, Leiden, 1999)
492 p., 60 min. video
60分のビデオ解説付きという、エジプト学の専門書の中では珍しい刊行物。
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