ヘロデ大王は、生まれたばかりのキリストの命を絶つために、2歳以下の男の子を全員殺すように謀った残虐なユダヤの王として聖書に登場し、有名ですが、この人はまた、建築をたくさん建てたことでも広く知られています。古代エジプトの建築王がアメンヘテプ3世や、その真似をしたラメセス2世だとするならば、 この人は古代ユダヤの建築王。
エルサレム神殿の大規模な増改築や、マサダの要塞、ヘロディオンなどが代表作となりますけれども、その業績を通覧しようとした労作。
Duane W. Roller,
The Building Program of Herod the Great
(University of California Press, Berkeley, 1998)
xvii, 351 p.
Contents:
Chapter 1. Herod's First Trip to Rome (p. 10)
Chapter 2. What Herod Saw in Rome (p. 33)
Chapter 3. Herod and Marcus Agrippa (p. 43)
Chapter 4. The Herodian Intellectual Circle (p. 54)
Chapter 5. Herod's Second and Third Trips to Rome (p. 66)
Chapter 6. Early Roman Building in the Southern Levant (p. 76)
Chapter 7. The Building Program of Herod the Great (p. 85)
Chapter 8. Caralogue of Herod's Building Program (p. 125)
Chapter 9. The Buildings of Herod's Descendants (p. 239)
Chapter 10. The Legacy of Herod (p. 254)
非常に巧みな構成を取っており、ヘロデ大王が若い時に、その時代における世界の中心ローマで何を見たのかをまず最初に描き、彼を囲むさまざまな人々、特に親密な交友関係を結んでいたと思われるアグリッパや、ギリシア・ローマの文化を彼に示した他の知識人たちを紹介しています。レヴァントにおける初期のロー マ建築に関して、その次に様相を伝え、ここまでが前提として述べられた部分。各章は平均して10ページほどに纏められており、比較的短い記述が続きます。
しかし第7章と第8章では、かなり長い説明がなされていて、これらふたつで150ページを超えます。章の長さが極端に異なり、ここが中心となるので、ここから読み始めても良いかもしれません。残りは、こうした建物がその後、どのような変遷を辿ったか、またヘロデ王の伝説がいかにして生まれたかを扱っていま す。
序文では、「1970年代の末にヘロデ大王に興味を抱き始めたが、建築王としての彼の達成を誰もまだ書いていないように思われるので、ヘロデ大王の没後2000年(註:ヘロデ王は紀元前4年に没)を記念して本を出した」(!)といったことが述べられています。
考古学的資料の他、アウグストゥス、キケロ、ホメロス、ヨセフス、プルターク、ストラボン、また聖書など、多数の古典著作やその他の文字資料で断片的に記される内容をもとにして組み立てられた、大変な本。引用文献リストは7ページにわたって続き、この他に参考文献リストが30ページ、付されています。
図版はすべてモノクロですが、遺跡の写真はほとんど著者が東地中海を廻って撮り貯めたもの。
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