2008年12月31日水曜日

ローリング 2007


ハリー・ポッター・シリーズの最終巻です。面白かった。
実は他の書評をまだ読んでません。7月下旬のエジプトへの出国日がちょうど刊行日で、成田空港で2冊を買ったものの、帰国後にようやく読了。

J. K. ローリング作、松岡祐子訳
「ハリー・ポッターと死の秘宝」、上下巻
(静山社、2008年)
565 + 565 p.

原著:
J. K. Rowling,
Harry Potter and the Deathly Hallows, 2 vols.
(Bloomsbury Publishing, London, 2007)

シリーズの第1巻が出た時からこの作品にはそれまでのファンタジーの読み手からの異論が強く、3大ファンタジーである「指輪物語」、「ナルニア国ものがたり」、「ゲド戦記」と比較されたりで、厳しい意見も出ていたように感じられます。でもこの作者の高い力量は一目瞭然で、長い期間を通じ、しかも映画化が同時に進行するというとてつもないストレスを受けつつ、良く書き通せたなという思いがします。
どんでん返しに次ぐどんでん返しを、普通は7回にもわたって完遂できるものではありません。並の才能ではない。ルイスによるナルニア最終巻「さいごの戦い」を彷彿とさせるこのシリーズの最終巻でも、終章近くのヴォルデモートとの一騎打ちの前に、死んだはずのダンブルドアとの対話を挿んだりと、構成がしっかり考えられていて感心します。「分霊箱」、あるいは魔法の杖は本当は誰に仕えるのかというプロットも素晴らしい。

少年少女向けの本に色恋沙汰、あるいは性的な場面を交えるのはいかがなものか、という誰もが何となく思っていた点についてはル・グウィンの「ゲド戦記」の4巻目で、嵐のような論議が巻き起こされました。しかし、それももう古い話です。この巻の最後のポッターの落ち着き先に文句を言う人がいるでしょうけれども、こうした終わり方は悪くない。というか、どんでん返しを最後まで繰り返した結果、このような落ち着いた終章「十九年後」を選び取るしかなかったのではないかと推測されます。

このシリーズではヴォルデモートが饒舌であることに失望した人も少なくないかと思います。確かに大作の「指輪物語」では、サウロンがしゃべるのはあの非常に長い物語の中で、たったの二言三言しかありません。それだけ悪と言う存在の描き方が巨大であったわけです。
「叩き上げの悪人」という親近感がある点は、しかしヴォルデモートの魅力にも繋がります。この悪人も、けっこう苦労してるんだと思わせるところがすごく面白い。映画の「スター・ウォーズ」に登場する皇帝と同じ側面がある。
太字や斜体字、感嘆符など、活字上の目障りな効果の多用に辟易し、離れていった読者もいるかと推察されますが、でもこれらは単に、今日の文学表現における些末的な工夫と見ればいいかと感じます。

3大ファンタジーにこの長編を加え、では4つの中ではどれが一番なのかと聞かれたら、「指輪物語」にも「ナルニア国ものがたり」にもそれぞれ愛着がありますが、個人的にはやはり「ゲド戦記」でしょうか。
前にも記した通り、学校の解体というモティーフが含まれていて、僕はル・グウィンの作品を高く買っています。長年にわたり書き続けてきた内容を壊すというモティーフ、その創作の意図に興味を惹かれます。

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