2008年12月17日水曜日

Sear 2006


古代ローマの劇場についての情報をまとめた建築資料集成。イタリア国内はもちろん、トルコ・ギリシア・シリア・チュニジア・リビアなどに残る400以上の劇場の遺構を扱っています。

Frank Sear
Roman Theatres: An Architectural Study
Oxford Monographs on Classical Archaeology 
(Oxford University Press, New York, 2006)
xxxix, 465 p., 7 maps, 34 figs., 144 pls.

図版を入れれば500ページ以上に及ぶ大作です。すべての劇場の平面図を掲載し、比較がきわめて容易です。
建築学的分析を扱う書であるため、設計過程の考察からデザインの相違、建造費は一体いくらであったのかなどを最初の100ページほどでまとめており、これからの劇場建築研究の基礎となる資料を示しています。
カタログ編では古代ローマの中心であるイタリアから始め、徐々に対象を周辺諸国へと拡げていきますが、地中海を基本的に逆時計回りに巡ります。

Contents:

1. Theatre and Audience (p. 1)
2. Finance and Building (p. 11)
3. Roman Theatre Design (p. 24)
4. Theatres and Related Buildings (p. 37)
5. Republican Theatres in Italy (p. 48)
6. The Theatres of Rome (p. 54)
7. The Cavea and Orchestra (p. 68)
8. The scene Building (p. 83)
9. Provincial Theatres (p. 96)

Catalogue
Italy (p. 119)
Britain, Gaul, and Germany (p. 196)
The Balkans (p. 255)
Spain (p. 260)
North Africa (p. 271)
The Levant (p. 302)
Asia Minor (p. 325)
Greece (p. 385)

古代ローマの劇場は、闘技場と並んで人気のあった娯楽施設でした。今で言うアミューズメント・パークに近い公共建造物であったように思われます。日常の生活とは異なる体験ができた場であったわけです。
このため、ラテン語でいろいろと書き残されており、キケロやプリニウスなどが当時の劇場について何を記しているのか、そのリストアップも巻末に所収されています。
この種の本の先行研究については、カプートによる論考があります(Caputo 1959)。北アフリカにおける古代ローマの劇場を述べた貴重な研究。今日、入手はかなり難しく思われます。

Oxford Monographs on Classical Archaeologyは、J. J. クールトンやR. R. R. スミスなど、古典建築の研究家たちも編集委員に加わっているモノグラフのシリーズで、建築に関わるものとしてはコンスタンチノープルにおける煉瓦スタンプの集成の2巻本がすでに刊行されています。

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