Manfred Bietak, Nanno Marinatos and Clairy Palivou,
with a contribution by Ann Brysbaert,
Taureador Scenes in Tell el-Dab'a (Avaris) and Knossos.
Oesterreichische Akademie der Wissenshaften;
Denkschriften der Gesamtakademie, Band XLIII.
Untersuchungen der zweigstelle Kairo des oesterreichischen archaeologischen Instituts, Band XXVII
(Verlag der Oesterreichischen Akademie der Wissenschaften, Wien, 2007)
173 p.
横長の大判で、カラー図版が非常に豊富です。コンピュータ処理を施した彩画片の図版を組み合わせて全体復原図などを作成しており、彩色片の報告例として今後、多く参照されるようになるに違いないと思われます。かなり退色した断片も、コンピュータによって復原され、いちいちオリジナルを撮影した写真と並列して見せるということをやっており、こうした試みは報告書としては初めて見ました。
アーサー・エヴァンスによって報告されたものも逐一、カラーで同じようにカタログ化して見せており、ここにこの本の重要性があるかと思います。
しかし全体として扱われる彩画片の数は、それほど多くはありません。縮尺も実寸、あるいは1/2が多く、小さな破片が圧倒的であることが分かります。点数が多い場合にはどうするのかということを考えさせる報告書。
全体は3つに分かれており、最初はビータックがアヴァリスから出土したものについて100ページほど報告しています。第2番目の章ではクノッソスから出土した類例に関し、マリナトスたちが考察を記しています。3番目は科学分析の結果などを収めた短い章。
エジプトとミノアとの美術様式の関連を絵画表現から追究する第一級の専門書で、ゆったりとしたレイアウトを採用しているために見やすく、註も430を超える量です。オーストリアとギリシアの専門家たちがチームを組んで出版した本として、後世に残る労作と評価しても良い。
表紙に用いられているカラーの全体復原図は、幅が2メートルほどの壁画部分です。広い面積の壁画片を組み合わせるパズルの結果をどのように学術的に発表すべきなのか、本文には書かれなかったいくつもの問題点が本当はあることが推察され、その点でも面白い本。言わば、パズルについてのパズルという問いかけが無言のうちになされています。
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