数年前から出版が予告されていましたけれども、ようやく上梓されました。H. フランクフォートによるアマルナ王宮の壁画の図集と並ぶ重要な書。
Fran J. Weatherhead,
Amarna Palace Paintings.
Seventy-eighth Excavation Memoir
(Egypt Exploration Society, London, 2007)
386 p.
ピートリーがアマルナ王宮を発掘し始めてから100年以上経ってついに実現されたカタログで、第一級の資料です。
カラー図版が少ないのは惜しまれますが、5つの色彩と白と黒との区別を施した線描による図版は、丁寧に仕上げられています。
アマルナ王宮は意図的に破壊されていますから、彩画断片はマルカタ王宮と比べて小さくなる場合が少なくありません。ほんの小さな1センチ四方の断片も対象に含めているのを見ると、作業は大変であったことが良く分かります。
だいたいモノクロ写真しか残っていない資料もあるわけで、その中で、できるだけ原資料を忠実に報告するにとどめ、個人の復原案を排除しようとしたことが了解されます。
203-204ページの部分では、昔の調査員たちによって異なる記述が残されている壁画の記録をどう紹介するか、おそらくは煩悶があったに違いないのですけれども、しかしその図版に描き込まれているスケールバーの長さはおそらく5cmではあり得ず、結果として、さらに輪をかけて読者を混乱させることになっています。
こうした些細な間違いはあるものの、古代エジプトの王宮建築を考える上では必読書と言わざるを得ません。散らばって世界各国の美術館に収蔵されている彩画片の情報を集成し、一冊に纏めた功績は賞賛に値します。
ギリシアの国際会議においてケンプとの連名で発表されたアマルナ王宮の壁画に関する共同執筆論文との併読が必要。
20世紀の後半は、古代エジプトの王宮建築に関する刊行物が多く出された時期であり、ケンプによるアマルナ王宮、ビータックによるテル・エル=ダバァの王宮やラコヴァラによるデル・エル=バラス(ディール・アル=バラス)の王宮発掘報告書などの刊行の他、オーストリアのビータックによる国際シンポジウムも開催されました。ミノアの王宮との比較研究も進められています。
SNSで拝見した時は、財布と相談しグッと押えましたが、2度目は抑えられず、本日手元に届いてしまいました。眺めているだけでも、かなり楽しいです。
返信削除kanatoさん、
返信削除xxivページの色ガイドに沿って、自分でモノクロの図版に色をつけると分かりやすくなるかと。この本、ちょっと豪華な塗り絵帳とも見ることができます。