2009年1月25日日曜日

Heisel 1993


古代の建築図面をくまなく集めた珍しい本。労作です。
類書は見られず、これからもしばらくは出版されないと思われる奇書。

Joachim Peter Heisel,
Antike Bauzeichnungen
(Wissenschaftliche Buchgesellschaft, Darmstadt, 1993)
xii, 279 p.

さほど厚くない本なのに、註は635もあります。メソポタミア、エジプト、ギリシア、ローマの各時代の図面を収集し、分析を加えています。
国士舘大学で和訳が進められているとの話も聞きましたが、未だ出版されていない模様。

図面の例を丹念に集めている点に感心する一方、落書きに分類すべきと思われる図も加えられており、ここは判断が分かれるところ。
また絵画史料として残されているものだけを対象としているので、古代エジプトのオストラカで墓の寸法だけが文字として記されている例などは含まれていません。この辺も残念な点です。レイデンのDemareeなどがこの分野を手がけていますが、本当は総体として考えるべきではないかと感じられます。
その線引きも、実は考えてみると難しい。

地域や時代を横断して考えると言うことが困難になっている時代にあって、これだけのことができるというのは驚きです。建築という分野のいい加減さが、良い方向に働いている例で、見習うべきなのかもしれません。

ビブリオグラフィーでは、

Cicero, Marcus Tullius: Epistulae ad Quintum Fratrem.
Epistulae ad Brutum. Fragmenta epistularum,
Ed. H. Kasten, (2. Aufl.)
Munchen 1976.

Vitruv: De architectura libri decem - Zehn Bucher uber die architektur
Ed. C. Fensterbusch, (3. Aufl.)
Darmstadt 1981.

などという記述が見られ、現代の研究者による著作と、キケロやウィトルウィウスたちによるラテン語文献とが同列に扱われてアルファベット順に並んでいます。文献学者の方々にとってはたぶん、我慢ならない点かと思われます。
しかし、こういう記述があってもいいのかもしれません。
これに倣って「アテン賛歌」を、例えば

Akhenaten ca. -1340

と表記したい誘惑に駆られます。

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